意外と大変:ドイツの初等学校から大学までの教育システム

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どこの中学をでた、どこの高校をでた、というのは、日本にあっては地域差や公私の別はあれども、教育システム自体にそう大差はないと思います。

基本的に、我々は『幼稚園(保育園)』→小学校→中学校→高校という教育の道を歩んできたことでしょう。

その先に、大学があったかもしれませんし、専門学校があったかもしれませんし、あるいはそのまま就職された方もいると思います。大学へ行かれた方は、過酷な受験勉強を乗り越えてきたことでしょう。

一方で、ドイツの教育システムは我々から見ると少々変わったもののように思えます(州によっても若干異なりますし)。

ドイツの教育において、重要なのは我々のように一回きりの入試試験ではなく、むしろ在学中の通信簿の成績によって、その先の人生が大きく左右されてしまうのです。

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ドイツの教育システム

ドイツの義務教育は、6歳から15歳までの9年間です。ただ、我々と同じように単純に小学校6年→中学校3年、という義務教育システムではなく、少し入り組んでいます。

『Kindergarden(幼稚園)』が3年間ある仕組みは日本と同じです。これは、行っても構いませんし行かなくても構いません。

まず初等教育ですが、これは『die Grundschule』と呼ばれ、6年ではなく4年で卒業します。

無理やり和訳しようとすると日本でいう、『小学校』のようなものですが、そもそも教育システムが違うため、無理に訳せないと言われています。ですので、『初等教育機関』とでも考えておいていただければいいと思います。

我々のなかには、小学校のときに受験をする人も多いと思います。ただ、区立の中学校に行って、立派に良い高校や大学へ行く人もいるので、ここでの成績はそこまで将来に直結していませんが、ドイツにおける『Grundschule』の成績は、まさにその人の一生を左右するといっても過言ではありません。

1~6(6が最低)までの成績が用意されており、授業態度や試験の出来によって、通信簿の内容が決まります。この、『Grundschule』の成績をもって、ドイツの10歳程度の子供たちの将来は大きく左右されていきます。

初等教育のその後

『Grundschule』の卒業後には、3つの教育機関の選択肢が待ち構えています。もっとも、どれでも選べるわけではなく、『Grundschule』の成績によって割り振られてしまうのですが(ハリーポッターにでてくる部屋分けする帽子のように、有無を言わさずに、です)

1.『Gymnasium』
『Grundschule』で中々良い成績を収めた優等生の子供たちは、『Gymnasium』というところに進学します。これも、中学校と高校をあわせたような機関なので、日本語訳は不可能ですが、よく和訳する際にも『ギナジウム』とそのまま訳しているパターンを見かけます。

『Gymnasium』での教育は、8年間続けられ、最終的に『Abitur』という大卒のような試験をうけ、受かれば晴れて卒業です。それをもって、大学に進学する形になります(日本のような受験はありません)。

中には、優秀なギナジウムを卒業しても、大学に行かずに職業訓練場や専門学校に進学する学生もいますが、ギナジウムを卒業した学生にとっては、サッカー選手を目指す、とかでない限り、どんな前途も選択可能なのです。

2.『Realschule』
さて、優秀な学生がギナジウムに進学するのだとすれば、中くらいの成績の子はどこへ進学するのでしょうか?答えは『Realschule』(これも和訳がむずかしいのですが)という、「中くらいの生徒が集まる」学校に進学します。

これは、ギナジウムと違って6年で卒業可能ですが、大学へ進学することができません。必然的に、卒業後は職業訓練学校などに通うこととなります。ただし、『Realschule』卒業後に頑張ってギナジジウムに転入し、そこで『Abitur』を合格すれば大学へ進学する道もなくはありません。

なんにせよ、あまり勉強が苦手と言われているような子供たちがここに集まるので、並大抵の努力では難しいですが。

3.『Hauptschule』
『Grundschule』で一番勉強ができなかった生徒はここへ進学することとなります。偏見かもしれませんが、特に家庭に問題をかかえているようなケースが多いため、カウンセラーなどが学校に常設されていることが多いとききます。

5年で卒業できる代わりに、大学進学への道は『Realschule』よりも険しいです。もし、ここに通う学生が大学進学を目指すのであれば、まず『Realschule』に編入し、次いでギナジウムに編入する必要があります。

そうしたケースは、ごくごくまれであるため、ほとんどの場合が大学に行かずに直接職につくという形になります。

ギナジウムにおける時間割

さて、ドイツの少年少女たちは学校でどのような教科を学びながらその青春時代を送るのでしょうか?

基本的には、日本と変わりません。国語・数学・英語・理科(化学、物理)・社会(歴史・倫理・政治)です。それに加えて、第二外国語の選択ができ、週に1~2回体育や音楽の授業があります。

人気なところでは、フランス語やイタリア語ですが、中にはラテン語(死語)というにっちな科目もあります。すでに話者人口は絶滅していますが、薬学の用語などでラテン語が必要なため、そちらの方面を目指すひとはラテン語を泣く泣く勉強しなければならないそうです。

また、多くの教育機関でドイツは無料(あるいはそれに近しい値段)です。私立の場合は別ですが、世の中に数多くある市立の教育機関に関しては、大学だろうとギナジウムだろうとコストがほとんどかからない、というのが魅力的です。