退職後に課税される住民税は海外留学の思わぬ落とし穴に!

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海外留学を志す者にとって、海外での家賃、交通費、語学学校や現地での生活費など、計算しなくてはいけないコストは多々あると思います。しかし、そうした前向きなコストと違い、日本に在住していないにも関わらず、我々の肩に重くのしかかってくる費用が存在します。

前年の所得に応じて翌年に課税される「住民税」です。

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住民税:住民税とは何か

住民税とは、日本国内に居住している限り必ず支払う義務が生じてくる税金のことです。この住民税は、住民票のある地域に応じて徴収され、その土地の地方行政サービスに使われますので、地方行政を成り立たせるためになくてはならない存在です。

相続税などと違い、上述のとおり「自分の住んでいる地方公共団体」に支払う、という点、それも、前年の6月以降自分の住んでいた市町村に対して支払いの義務が生じる、という点に注意してください。

つまり、前年まで会社勤めをして、今年になって海外留学のために会社を退職した場合、昨年まで会社勤めをしていた際の給料に基づいて、昨年まで自分が居住していた地域に住民税を支払う必要がでてくる、ということです。

また、面倒なことに、今まで会社勤めをしていた際には、給料から自動的に天引きされていたはずのこの住民税ですが、辞めてしまうと会社は計算してくれないので、退職後の課税は自分で支払う必要がでてくる、というわけです。

この「昨年の収入に対していくらくらい住民税」を支払わなくてはいけないのか、というのは意外と無視できない大きな問題ですので、以下、簡単な計算方法、および詳細な計算方法をまとめます。

翌年課税される住民税の簡単な計算方法

まず、複雑な計算は面倒だ、という人向けに、簡単な住民税の計算方法をここにまとめます。

(所得―控除額)×税率=住民税

控除額、というのは、生命保険などに加入している場合、課税されない金額のことです。ただ、本当にざっくりとした住民税の額が知りたければ、前年の給与明細から控除されている額を参考にすれば、おおよその額は概算でわかるはずです。

海外留学の際の費用の試算を行うにあたっては、このくらいのざっくりとした把握のしかたでも問題ありませんが、念のため、詳しい計算方法を知りたい人は、記事の最後の計算式を参照ください。

どのように住民税を支払うのか

続いて、海外留学の際に問題なのが「どのように住民税を収めるのか」という部分です。基本的に、会社勤めは上述の通り給料からの天引きなので問題ないのですが、退職してしまうと自分で支払う必要が出てきます。

具体的な流れを説明すると、まず、退職してしばらくすると自宅に納税を促す書類が送られてきます。これを、一括、または分割で支払うことができます。1~5月までに退職した場合、一括徴収が原則ですが、直接市役所などに電話して交渉すると、分割払いなど、意外と柔軟に対応してくれます。

海外に出発してしまったあとでは、自分では払えなくなりますので、このタイミングで一括でさっさと払ってしまうか、もしくは手持ちの現金が即座に用意できない場合、家族を代理人にして、代わりに払ってもらう、というやり方が存在します。

また、最終手段として、海外留学にすべての費用を使ってしまい、住民税の支払いがどうしても厳しそうな場合、本来1年で支払うべき住民税を、2年ほど延長して分割で払うようにしてくれるところもあります。市役所は、不払いには厳格な態度で臨んできますが、払う意志さえ見せておけば割と柔軟です。

住民税不払のデメリットは?

納税は国民三大義務の一つですので、これを無視すると厳格な処分が下されます。例えば、このまま海外留学に行ってしまうので、もう無視していいか、と思う方がいるかも知れませんが、そうしてしまうと、とんでもないことになります。

まず、住民票を未納のまま放置しておくと、督促状が自宅に届きます。この時点では、国もまだ穏便です。しかし、これを無視し続けると、今度は調査が入り、最終的には自宅の財物の差し押さえ、銀行口座の凍結などが行われます。

国内の住居も銀行口座も引き払って、もはや怖いものなしで海外に行くような人にも、デメリットは生じます。いわゆる「延滞税」の存在です。年間で14パーセント、というとんでもない額の延滞利息が発生しますので、将来やっぱり日本に帰ってきて新しく仕事につきたい、などというときにとんでもないことになります。

いくら、出国の時点で日本に帰ってくる予定がなくとも、将来なにがあるか分かりませんので、やはり、住民税を無視する、という選択肢はないということです。

海外転出届け

ドイツに行く前に、絶対に忘れてはいけないのが、『海外転出届』です。

海外転出届とは、住んでいる住所の住民票を抹消し、海外住所に移す、という作業です。この住民票を抹消をしておかないと、健康保険料の支払いを海外にいる間にも延々とし続けることになりますし、かつ住民税の通知がいつまでも来ます(無収入なら税金はかかりませんが、その証明のための事務手続きが煩雑です。)

  • 住民税は前年の所得に応じて課せられる
  • 計算が面倒な人は、前年の住民税くらいの額を見積もっておく
  • 不払いは差し押さえ措置の対象となるケースがある
  • 海外転出届を必ず忘れない

翌年課税される住民税のしっかりとした計算方法

最後に、ちゃんとした住民税の計算をしておきたい、という方のために、翌年課税される住民税の細かい計算方法をまとめます。

1『給与所得金額』

給与所得金額=前年1~12月までの給与所得-給与所得控除です
この計算はやっかいなので(年収によって控除の率が違うので)、源泉徴収票などで『給与所得控除後の所得』を調べてください。ここでは仮に鈴木さん(銀行OL:独身)の給与所得金額を200万と仮定して話をすすめましょう。

2『所得控除』

先ほどの『1給与所得金額』からさらに『2所得控除』もマイナスできます。この、所得控除を行った後の金額が、実際に住民税に課税される基本金額になります。具体的には、以下の控除がなされます。

A:基礎控除→誰でも33万円控除
B:配偶者控除→扶養配偶者のいる場合33万円
C:扶養控除→20歳未満の扶養家族がいる場合、33万円ずつ控除
D:社会保険控除→社会保険料の全額が控除対象
E:生命保険料控除→年間の生命保険払い込みがによって以下の通り
12000円以下:全額
12000~32000円:払い込み額×50%+6000円、
32000~56000円:払い込み額×25%+14000円
56000円以上:28000円

以上をすべて足したものを、1で調べた値から引き算します。
1給与所得金額-2所得控除=課税金額(X)が求められます。

鈴木さんの場合、独身なのでA,D,Eが控除されます。Aは33万円、D,Eは設定していませんでしたが、それぞれ30万円と2万円にしておきましょう。

すると、課税金額Xの値は200万円-(33万円+30万円+2万円)=135万円となります。

3 『調整控除額』

この項は、計算が面倒な割に住民税の計算結果に及ぼす影響が少ないので、合理的な人は読み飛ばしてください。この調整額は、最終的な住民税の額から引いてもいい値ですが、たいした額にはなりません)

X=135万という値が算出されました。これが、200万円より高いか低いかで、その後のフローが異なります。

以下の判断基準をご覧ください。

1. Xが200万円以下の人
次の(1)と(2)のいずれか小さい金額の5%
(市民税3%、県民税2%)
(1)人的控除の差の合計額
(2)市・県民税の合計課税所得金額

2. Xが200万円を超える人
(1)人的控除の差の合計金額-(合計課税所得金額-200万円)を計算する。
(2)(1)×5%(市民税3%、県民税2%)=調整控除とする。ただし、(2)が2,500円未満のときは、(2)は2,500円とする。

ちなみに、人的控除とは、基礎控除や配偶者控除など、控除のうち人に関するもののことを指します。『人的控除の差』は、基礎控除に関しては5万円と定められているのでそれをそのまま計算式に使います(配偶者控除、扶養控除などの人的控除の差が知りたい人は、以下のHPを参照してください)。
http://www.city.suwa.lg.jp/www/info/detail.jsp?id=3826

ここでは、鈴木さんは扶養者も配偶者もいないので、基礎控除の差額5万円だけが考慮されることになります。独身の方は大体みな5万円と考えてください。

5万円×5%で、2500円(市民税1500円、県民税1000円)です。これは何かというと、住民税から差し引かれる額のことです。まあこれをPとでもしておきましょう。

4『住民税の計算』

所得割(X×10%)+均等割(4000円)-調整控除(P)が、最終的に一年間に収める住民税の額です(住民税は、都道府県と市区町村税をあわせたものですが、別に一緒に計算しても結果は変わらないので10%で統一します)。

数学的にいくと、
(X×0.1)+(4000)-P=住民税
(1350000×0.1)+4000-2500=136,500円

13万6500円と出ました。これが一年に支払う鈴木さんの住民税です。

海外留学者のための国内主要事務手続き目次