ドイツに限らず海外留学に行く際には健康保険・賠償責任保険に加入しないと基本的にビザはおりないケースが多いですが、携行品損害保険に関しては入ろうが入るまいが個人の自由です。
携行品損害保険とは、海外滞在中に、荷物が盗難されたり、あるいは破損した場合に保険金を請求できる保険のことです。
今回は、携行品損害保険で保険金を請求する際の注意事項を、私の体験談を交えてまとめていきたいと思います。
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携行品損害保険とは?盗難や紛失でお金は帰ってくるの?
携行品損害保険とは、海外旅行保険のオプションとしてつく特約で、海外旅行(海外滞在中)に自身の携行品、例えばカメラや腕時計やパソコンなどが、盗難、破損などの被害にあった場合、その損失を保険会社が補てんする保険です。
目次
1.置き引きは有責?携行品損害保険の支払い対象かどうかをチェック
2.海外で盗難にあった!具体的な保険金請求手続き
3.保険金の算定方法と、請求時の注意事項
1.置き引きは有責?携行品損害保険の支払い対象かどうかをチェック
限度額や、支払われる場合、免責(自己負担額)などは保険会社や商品ごとに異なりますが、なんでもかんでも、どんな場合でも保険金請求できるわけではありません。
以下、保険金請求を始める前に、実際に自分の被った損害が保険金の支払い対象なのかを確認しましょう。
1.保険金請求できるモノ、できないモノが存在する
まず、「請求できるモノ」と「請求できないモノ」の区別が存在します。例えば、多くの保険会社が、「有価証券」「紙幣」の損害に関してはてん補しない、と保険約款に明記しています。その他、コンタクトレンズ、義足など、保険会社によって保険支払い対象外となるリストが記載されているので、チェックしなくてはいけません。
それゆえ、仮に「財布」と「タブレットパソコン」の入った「手提げバッグ」が盗まれた場合、「財布」「タブレットパソコン」「手提げバッグ」の分の保険金はおりますが、財布の中身までは返ってこないという点に注意しましょう。
2.保険請求できる被害、できない被害
続いて重要なのが、どんな被害にあった場合に保険金が降りるのか、という部分です。携行品損害保険の原則は「不可抗力の被害」です。具体的には、「盗難」「破損」などが例として挙げられます。逆に、置き引きなど、自分に過失のあるものに関しては保険金は受けられません。
- 現地の強盗にバックをひったくられた(保険金支払い対象)
- カメラを落っことして壊した(保険金支払い対象)
- バッグをレストランのテーブルにおいて、トイレに行っている間に盗まれた(免責)
そして、なにも持って「強盗による盗難」あるいは「置き引き」かを判断するかは、後述の通り、現地の警察に届け出をし、「警察届け」および「宣誓書」を発行できるかどうか、です。
簡単にできる印象があるせいか、保険金詐欺が絶えないのがこの『携行品損害保険』ですが、虚偽の申告はばれるリスクが高いです。
現地の警察も、世界的にこうした詐欺が多いせいか『保険金詐欺』に関しては割と目を光らせていますし、場合によっては目撃者情報なども集められてしまいます。ですので、単なる「置き引き」を「強盗による被害」に捏造する場合には、相当の覚悟が必要です。
保険金が支払われるのはあくまで『突発的な事故』に限るということを理解しておきましょう(これは保険一般に当てはまる原則ですが)。
3.保険金を請求の条件を満たした保険に加入しているか
さらに、大前提として重要なのが「保険条件を満たしているのか」どうかです。まず、海外旅行保険に加入する場合、原則として「日本滞在時」に保険加入することが条件となり、海外渡航後の加入は無効になるケースが多いです。
また、クレジットカード付帯の海外旅行保険の場合「交通機関の支払いをクレジットカードで支払ってから」はじめて保険が開始される、という「利用付帯」と呼ばれる条件も存在します。以下、例えば三井住友VISAカードの海外旅行保険で、保険金支払いが有効になる条件を例に見てみましょう。
1.日本出国前に航空機、電車、船舶、タクシー、バスといった公共交通乗用具(※1)の利用代金を当該カードで支払った(※3)場合
2.日本出国前に宿泊を伴う募集型企画旅行(※2)の旅行代金を当該カードで支払った(※3)場合
3.日本出国後に公共交通乗用具(※1)の利用代金をはじめて当該カードで支払った(※3)場合
要は、旅行代金やその国や地域までの交通手段である、移動手段の代金をクレジットカードで払った場合ということです。
以下、携行品損害保険において注意しなくてはいけない点を一般的にまとめます(全ての保険会社がそうというわけではありませんが、一般論として、ということです)。
2.海外で盗難にあった!具体的な保険金請求手続き
続いて、実際に海外で盗難にあった際の保険金請求手続きを見ていきましょう。
さて、多くの保険会社がサービスや価格をうたっていますが、肝心なのは実際に事故にあったときです。ドイツではありませんが、私は以前トルコに行った際にひったくりの被害にあいましたので、その時の体験も交えて保険金請求の流れを説明します。
私の場合は、イスタンブールの橋の近くでタクシーに乗る際に、あっというまに荷物を後ろからバイクで来た2人組にひったくられました。反撃する暇もないくらいあっという間の出来事でしたが、反撃はあまり考えないほうがよいです。
南米にせよ、東南アジアにせよ、中東にせよ、今日日のひったくりは大体ナイフや銃器を武装している可能性があります。日中に発砲されて亡くなった日本人も中にはいますので、被害にあった場合はかっこつけずに大人しく差し出しましょう。こうした無用の傷害事故を防ぐための保険でもあります。
さて、盗難にあったのち、現地では以下のようなことを行わなくてはいけません。
- 現地警察への届け出
- 各種クレジットカードのストップ
- 保険会社への連絡
ちなみに、1と2は順不同です。警察に向かいながらクレジットカードをストップする、というのが理想的な流れです。
以下、それぞれの説明です。
1.現地警察への届け出
各国の警察では大体英語による説明書を書かされます。そこでサインなり拇印なりを押すことになるのですが、このときの原本は必ず大切に保管しましょう。
保険会社は保険金請求の時大抵この『原本』を要求してきますので、これを無くしてしまうと保険金が降りない可能性があります。
盗まれた物と盗まれた状況をこのとき英語で説明しますが、盗まれたものはよほど運がよくないと返ってこないと思っていてください(と、いうか今まで海外で盗まれて品物が返ってきた人を見たことがありません)。
2.各種クレジットカードのストップ
さて、重要なのが『クレジットカード』『銀行カード』などが財布に入っていたら、これらをストップさせることです。
特に、VISAなどは中東あたりではさっさと使われてしまうこともありますので、一刻も早くカード会社に連絡する必要があります。
ただし、クレジットカードの連絡先など、そもそもクレジットカードが盗まれてしまったら分からなくなりますので、海外に行く際にはあらかじめメモなどしておくことをお勧めします。また、携帯などから確認できますので、Wi-Fi状況下であれば検索すればすぐに電話番号は分かります。
ここで、オペレーターにクレジットカードの最後の使用履歴や暗証番号などを口頭確認し、クレジットカードのストップが可能になります。帰国後に再発行の手続きを忘れないようにしましょう。
3.保険会社への連絡
最後に、保険会社に連絡し、今後どうすればよいのかを確認しましょう。警察の証明書が必要だと言われます。また、事故の後処理にかかった交通費のレシートなどをとっておくと、保険金請求可能だといわれますが、東南アジアなどバイクタクシーなどで領収書が発行できない場合、これはレシートが無くても請求できます。
また、パスポートを盗まれた場合などは、パスポートなどの再発行費用も原則保険金請求可能です。
この電話で、とりあえず事故にあったことを伝えて置けば、自宅あてに『保険金請求書』が送られてくる手はずになりますので、あとは帰国後に請求書を埋めて返送しましょう。
ただし、海外からの通話はフリーダイヤルではないので、受付のお姉さんには余計な話は挟まずに、手短に仕事の処理だけするようにお願いしましょう(彼女らのマニュアル通りに対応されると、お怪我はありませんでしたかー?から始まり、物凄い時間と電話代がかかりますので)。
4. 保険金請求の手順(帰国後)
帰国後は、保険会社から自宅に届く書類を待って返送する必要があります。保険会社によって細部は異なると思いますが、大抵どこの保険会社でも以下のものは必要になります。
- 現地の警察の証明書
- 領収書
- パスポートやビザの写し
以下、それぞれの説明です。
- 1.現地の警察の証明書
- 2.領収書
- 3.パスポートやビザの写し
上述しましたが、原本を請求される場合がほとんどです(英語バージョン)。海外の警察によっては『警察のふりをした詐欺師』などが横行しており、証明書の発行に金がかかるとか、なにかといちゃもんをつけてくるケースもあるようですが、原本は普通にくれます。
なので、ここできちんと預かって、大切に保管しておきましょう。ただ、最悪の場合これが無くても、ちゃんとした理由があれば受け付けてくれます。(帰国の飛行機の時間が迫っていて警察に行く時間が無かったなど)。保険会社は保険金不払いだと金融庁に咎められるのが怖いので、この場合、疑わしきは罰せず、の原則で消費者優位に解釈してくれるでしょう。
原則、提出を求められるのですが、上述の通り、あくまで原則であって絶対ではないので、これも、なければ無いでも問題ありません。
例えばカメラを盗まれたのであれば、買ったときの領収書や、壊れたのであれば修理にかかった費用、あるいは現地で事故にあったために出費した交通費が必要になります。
ただし、買った日付が古く、領収書もなく、金額も定かでない場合は、しょうがないのでおおよその数字を書いても保険金はおります。ただ、後述の通り、買った時の値段ではなく、時価算定です。また、保険会社のほうでも市場価格を調査しますので、あまり不当に高い値段の書いてもはじかれます。
ただ、上述したように海外で盗まれたものはほぼ100パーセント見つかりませんので、レシートが無いと言ってしまえば盗まれたものが2010年製だったか2012年製だったかなどは誰にも分からないのが現状です。あとは良心と良識の判断するところになります。
最後に、本当に海外に行ったのか、日にちなどに嘘偽りはないか、ということでビザやパスポートの写しの提出を求められます。
これに関してはあまり疑義をはさむ余地もないと思いますので、要求されたら素直に添付するようにしましょう。ちなみに、パスポートが盗まれていて出国日が不明になっていても、新しいパスポートの写しで代替可能です。
ちなみに、保険金請求のルールとして『国外から日本に帰るため』の書類には保険が適用されますが、帰国後の書類には保険はききません。なので、時間がある場合は国外でパスポートを最取得したほうが保険で賄えるので便利です。
3.保険金の算定方法と、請求時の注意事項
最後に、注意しなくてはいけないのが、保険金は買った時の値段ではなく、時価で算定される、ということです。つまり、2011年に10万円で買ったニコンのカメラが、2014年に盗まれたからといって10万円そっくりそのまま帰ってくるわけではありません。
これは「減価償却」という会計上の理論に基づいています。2011年に10万円で買ったカメラの価値は、永遠に10万円、というわけではありません。しだいにその価値が減じられていくのです。
会計的な知識になりますのであまり深入りはしませんが、例えばカメラですと5年が法定耐用年数ですので、3年前のカメラですと価値は半分以下になります。
ですので、2017年に被害にあい、盗難されたもののリストの金額記入欄に「2014年に購入した10万円のカメラ」と記入しておくと、振り込まれる額は5万円程度です。
また、金額にまつわるもう一つ面白い仕組みとして、保険会社のシステム上、「10万円を超える」保険金の支払いに関しては、審査が厳しくなります。場合によっては、保険会社から調査の依頼が入ることもあります。
だからと言って無理に請求金額を落とせ、とまでは言いませんが、状況証拠が残っていないのをいいことに『あれもこれも盗まれたことにしよう』といって詰め込み過ぎると、あとから痛い目をみますので注意しましょう。