海外渡航に際して健康保険を支払い続けることはデメリットのほうが多い

健康保険

photo credit: Thomas Hawk via photopin cc

学生のうち、会社員のうちは、自動的に親や会社の健康組合保険に加入できますので、健康保険に関してそこまで深く考える必要はありません。しかし、会社を辞めてしまうと、途端にその効力が切れてしまい、自ら入りなおす必要が出てきます。

今回は、海外留学に行くために会社を辞めた人が、その後どのような手続きを行わなくてはいけないのか、どうすると損をするのか、などの点に焦点を絞ってまとめていきたいと思います。

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健康保険:健康保険とは何か

まず、簡単に健康保険のおさらいです。健康保険とは、社会のセーフティ・ネットの一つで、国民に加入が義務付けられている保険です。つまり、みんなでお金を出し合って、みんなで困っている人を助け合おう、というコンセプトのもとに作られた保険です。

今回の「困っている」人とは、すなわち病気の人のことです。つまり、健康保険は、日本国内の医療機関を使用する際に、減額されるようなシステムなのです。

そのため、我々が病院に行って治療をしてもらうとき、健康保険のおかげで、従来の医療費よりも7割程度減額した額を払っていることになります。逆に、健康保険なしの自由診療になると、今までかかっていた治療費のざっと3倍が請求されるようになる、というわけです。

また、健康保険は任意加入ではなく、強制参加です。ですので、後述するように、会社を辞めて無保険状態になったら、なんらかの形で健康保険に再度加入する必要が出てきます。

退職するとどうなるか

企業に在籍中は、会社の健康保険組合に加入することになりますので、問題ないのですが、会社を辞めると、無保険状態になってしまい、一般的に以下の3つの選択肢の中から、適したものを選ぶこととなります。

  1. 国民健康保険に切り替える
  2. 勤めていた会社の健康保険を、一定期間任意継続する
  3. 健康保険自体に加入しない

他にも、減免などのやり方もありますが、オーソドックスなものとして以上の3つを挙げました。

そして、上述の1と2は、国内に残る人向けの選択肢であり、これから海外に行く我々は、日本に住民票が残らないので、ここではその違いについて深く検討しないようにします。

我々のようにそのまま海外に留学する者は、ここでは、主に「健康保険自体に加入しない」という選択肢をとることになりますので、この選択肢に焦点を絞って説明していきます。

ただ、後述するように、会社を辞めてから渡航までの期間に空白が生じる場合は、一度市役所などで国民健康保険に加入する必要があります。

海外渡航の際の健康保険とスケジュール

冒頭でも述べたように、健康保険自体が、日本の医療制度を利用するためのものですので、扶養家族などがいない限り、海外に行かれる方に関しては基本的に不要です。海外にいれば、健康保険の支払いの義務は生じません。そして、ドイツの医療技術は問題ないレベルですし、よっぽどのことがなければ、日本の健康保険を支払い続ける必要はないでしょう。

(一応、海外療養費請求システムと言って、日本の健康保険を持っている人が、海外で急な病気やケガに見舞われて治療された際、帰国時に一部払い戻しが受けられる制度が存在しますが)

逆に、仮に健康保険に加入したまま海外にいくと、使いもしない医療制度のために、毎月2~3万円支払わなくてはいけませんので、まったくの無駄といっても過言ではありません。

もし、日本に帰って治療が受けたくなったら、日本に帰国した後に住民票を戻し、市役所で手続きすればすぐに健康保険に加入することができますので、この点はあまり心配する必要はありません。

ただ、ここで注意しなくてはいけないのが、海外渡航の際の「タイムラグ」です。つまり、会社を退職し、海外渡航をするまでに、1か月以上の期間日本に滞在するのであれば、この期間に対しては、健康保険の費用を支払う必要が出てきます。上述の通り、健康保険の支払いは義務ですので。

実際に、会社を辞めたのち、どのくらいの期間健康保険を払わなくてはいけないか、それを判断するためには「月の末日に、その市町村(日本)にいたか否か」が重要になってきます。

ちょっと例を挙げましょう。例えば、2015年3月31日付で会社を退職したとします。翌日以降、会社に勤めていた時に申し込んでいた健康保険は効力を失いますので、翌月には健康保険に加入する必要が出てきます。

ところが、上述の通り、健康保険支払いの義務が発生するか否かは、その月の末日に日本にいたかどうかですので、4月29日までに日本を離れ、海外に行く場合、4月分の健康保険料を支払う必要はありません。

ただし、この場合、3月31日に会社を辞め、4月29日に海外に渡航するまで、医療機関を利用する場合の負担はすべて自己負担になりますので、もし海外渡航前にちゃんとした医者の治療を受けてから海外に行きたい、という方は、4月29日までの健康保険を、市役所などで加入する必要が出てきます。

また、具体的に健康保険の支払いの義務から解放されるのは「海外転出届」を提出してからです。これを忘れて海外渡航してしまうと、海外在住中も延々と健康保険の請求が来てしまいますので、市役所などで必ず海外転出届を提出するようにしてください。

健康保険の裏技

最後に、海外留学者のための裏技を教えます。一度親元を離れ、会社勤めをしてしまった場合、親の健康保険の紐つけから解除されてしまい、その後、自分で健康保険を支払い続けなくてはいけなくなります。

つまり、我々が一時帰国して、日本で歯医者などの治療を少し受けたい、というときなども、健康保険にいちいち入りなおさなくてはいけないので、とても面倒なことになります。

しかし、健康保険組合の中には、一度親元を離れた場合でも、大学、大学院に入学することによって、再び親元の健康保険に紐づけることができるようになるものがあります。そして、この大学・大学院は日本国内、とは限定されていないので、ドイツの大学院に入学する場合でも、親元の健康保険に再度紐づけすることが、場合によっては可能になるのです。

この箇所は、実際に親が加入している健康保険組合の規定によると思いますので、一度実家に確認してみるといいでしょう。これが成功すれば、一時帰国のたびに健康保険の手続きを行う、という面倒な所作から解放されます。

  1. 基本的には、海外渡航中の健康保険の支払いは不要
  2. 保険料の発生は、その月の末日に日本に居たか否かで判断される
  3. 海外転出届を必ず忘れない!
  4. ドイツの大学・大学院に合格すれば、親元の健康保険に再度紐づけてもらえる可能性があり