普段我々が日本の社会で何気なくつかっているジェスチャーも、言葉と同様で、国や地域が違えば別のニュアンスを持つことがあります。
例えば、ほとんどの国では首を縦に振ることは『yes』を意味しますが、ところによっては『no』を意味したり、あるいは『good』という意味で親指をたてることが、イスラム圏では失礼に当たることもあります。
今回は、ドイツで行われているジェスチャーの意味についてまとめていこうと思います。気を付けなければいけないものもあれば、ドイツ人が無意識におこなっているようなものもありますので参考にしていただければと思います。
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ジェスチャー・ボディランゲージとは
ジェスチャーとボディランゲージは、辞書的な意味合いは少し異なるようです。
ジェスチャーは言語的な背景を同じくしなくても伝達可能であるのに対して、ボディランゲージはある程度言語的な基礎知識を前提すると、wikipediaには書いてありますが、あまり大差ないように思われます。
また、人間だけではなく動物(特に霊長類)もジェスチャーを行うことが認められています。特に、デスモンド・モリスという動物学者の研究は欧州圏では人気が高いので、読んでおいて損はないかと思います。
The publication of The Naked Ape in 1967 – it has since sold 12million copies – brought zoologist Desmond Morris international fame. Studying humans from the viewpoint of animal behaviour was controversial and marked the start of our fascination with body language.
『「裸の猿」は1967年に出版され、1200万部売れたベストセラーとなった。この本は、デスモンド・モリスの名を世界に知らしめた。人間を動物的な仕草から観察したこの研究はセンセーショナルを巻き起こし、またボディランゲージブームの火付け役にもなった。』
さて、本題ですが、今回はドイツで行われている、あるいはドイツと日本で異なる意味をもつ以下のようなジェスチャーについてまとめていきたいと思います。
- 『あっちへ行け』『こっちへおいで』
- 『お前頭おかしいんじゃないか?』
- 『死にさらせ』
- 『もううんざりだよ』
- 『大体このくらい』
- 『さあね』『どうでもいいや』
- ドイツ人の数字の数え方
5.と6.と7.に関しては別に知らなくても問題ないのですが、他のジェスチャーは一歩間違えるととんでもないことになるので注意しましょう。
ドイツのジェスチャー
1.『あっちへ行け』『こっちへおいで』
ある一つのジェスチャーが日本とドイツでまったく逆の意味を持ってしまうと言う一つの例です。
人にもよるでしょうが、我々日本人は人を呼ぶとき手の甲を上にして招くような動作をすると思います。これはドイツでは『あっちへ行け(Geh weg!)』というネガティブな意味になるので、注意が必要です。
もし親しい友人などをこっちに呼びたいのであれば、以下の写真ように手の甲を下にして招く仕草をしなくてはいけません。
とはいえ、日本と同じで見ず知らずの人にこれは失礼ですので、身近な友人に限りましょう。どうでもいいですが人差し指を「くいくいっ」として『ちょっとお話があるんだけど(怒)』みたいにするのはドイツも同じようです。
2.『お前頭おかしいんじゃないか?』
頭に指をあてる動作は『お前の頭は大丈夫か?』『お前は気が狂っている』みたいなニュアンスをもちます。
東洋圏ではこれは『考え事をしている』『熟考している』という仕草にも使われますが、西洋圏ではこれは重要な誤解を引き起こしますので注意しましょう。
例えば、以前スイスでアジアのハンドボールの選手が活躍していましたが、会見中に観客に向けてこの仕草を(彼は考える意味でやったのですが)おこなった結果、挑発行為ととらえられて、その後の一切の試合出場を禁止されたと言う話も伝わっています。
両手で頭をかかえる分にはなんら問題ないようですので、もし考え事をするのであれば両手で頭をかかえましょう。
3.『死にさらせ』
ちょっとアンダーグラウンドな表現ですが、マフィアやヤンキーがよくやるのがこの『死にさらせ』のポーズです。
これは首を横切るように指を切るやり方で、映画などでよく使われます。
まあ日常でこれを使うようなシーンはまずもってない、というかお目にかかりたくもないですが、例えば日本でために『首になった』『解雇された』みたいな意味合いで首をちょんと切るようなジェスチャーをする場合もありますので、誤解されないように気を付けましょう。
4.『もううんざりだよ』
首のしたの顎のあたりまで、手の甲を浮かばせると『もううんざり』といったニュアンスになります。
『もうあきあきだ』とか、そういったニュアンスも持ちますが、基本的には失礼なジェスチャーですので間違っても目の前の人に『君の話にはうんざりだぜ』みたいにジェスチャーするのはやめておきましょう。
5.『大体このくらい』
手の甲を広げて、蝶々のように左右にパタパタさせると『大体』とか『約』とかいう意味になります。ドイツ語では『fast』『etwa』『ungefähre』みたいなニュアンスです。
正直、我々にはこれと言って使い道のないジェスチャーなのですが、ドイツ人は無意識にこれを多用しています。まあ、自然とこれがでるようになればなんとなくドイツに慣れてきたな、という気がしないでもありませんね。
6.『さあね』『どうでもいいや』
よくアメリカ人が映画などで『やれやれ』とやっているあれです。もしくは、両手を持ちあげて肩をすくめて『pardon?』みたいにするジェスチャーです。
これは割と多用します。両手をあげずに、肩をすくめるだけのバージョンもありますが、より『知らないね』オーラを出したい場合は両手もつけてやるとなおよいです。
7.ドイツ人の数字の数え方
これも人によると思いますが、日本人の中には指を折りながら数字を数える方がいるかもしれません。西洋圏では逆に、指を開きながら数字を数えます。
さらにドイツの場合は少し特殊で『1』を数えるときは人差し指からではなく『親指』から数えます。その後、人差し指、中指、薬指・・といって1~5までカウントしていく形です。
例えば、こちらが『これいくら?』と尋ねて、相手が親指をたてたら『good!』という意味ではなくて『1ユーロ』という意味です。
私も詳しくは知りませんが、この親指から数えるやり方はどうもドイツ特有のものだそうで、イギリスなど他の西洋圏では違うようです。
日本のジェスチャー
ドイツやスイスでは、会社が『日本人とのビジネスマナー講座』を開設するほど、日本の作法は彼らにとって複雑なようです。まあ、日本人の私から見ても複雑ですし、私も含めて全ての日本人が完璧だとは思いませんが。
例えば、彼らには『お辞儀』の作法はありません。笑い話ですが、日本人とドイツ人がはじめて会ったとき、お互いに相手の文化にあわせるために、ドイツ人はお辞儀をし、日本人は握手しようとして、微妙な空気になってしまう、という話もあります。
また、ドイツ人が面白がっているのが『なにも無い手に何か書く仕草をする』行為だそうです。たまに私も考え事をするとき、手の平に人差し指をつける仕草をすますが、これは中々彼らにとって興味深いものだそうです。
あと、日本人がよくおこなう写真のときのピースサインも、彼らからみたら不思議なジェスチャーだそうです。
基本的に気をつけなくてはいけないジェスチャーを抜きにすれば、あとはドイツに住んでコミュニケーションしているあいだに色々な作法やしきたりが身についてくるものだと私は思います。
語学の勉強と同じで、学校だけではなく町やイベントなどいろいろなところに出かけて、生の人々に触れてみることで、ドイツの文化が吸収できることでしょう。