海外留学に伴って必ず実家や自身の保険契約を見直さなくてはならない理由

海外留学に際しては、国内を空にすることになりますので、住民票の抹消、年金や健康保険の手続きなど、事務手続きが一つの乗り越えなければいけない大きな問題になってきます。

今回は公的な手続きではなく、長期的に海外に住居を移す際に同じくとても重要な「国内の民間の保険関連」の諸問題に関してまとめていきたいと思います。なお、この保険関連の諸問題は、ドイツ留学に関わらず、海外留学、出張などの目的で、長期的に日本を留守にされる社会人の方全般に当てはまる重要事項です。

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民間の保険関連と国外退出の関連性

まず、海外に居を移す際、留学に出かける際に「海外における保険」が重要になってくるのは、直感的にお分かりかと思います。例えば、留学中のケガや病気に対する保険、留学中に人にケガをさせてしまった時の保険、などです。

一方で、日本国内の保険関連に関しては、割となおざりにされがちです。実は、この海外渡航のタイミングで、本人や家族の加入済みの保険契約を見直さないと、とんでもない損をする可能性がでてきます。

  1. 年間数万円単位の掛け金の損をする
  2. 今まで積み上げた自動車保険の等級をすべて失う
  3. 事故を起こしても、保険金が請求できない

逆に、うまく利用すれば、以下のようなメリットを手に入れられる可能性があります。

  1. 海外で「個人賠償責任保険」「携行品損害保険」などに加入しないで済む
  2. 一時的な帰国時に、家族の車を運転しても自動車保険の支払いの対象になる

ですので、軽視せずにしっかりと内容を確認していっていただければ、と思います。

保険を見直すメリット:魔法の言葉“別居の未婚の子”

まず、具体的に海外に住居を移す者にとって、なんで国内の保険(特に家族の自動車保険、火災保険など)を見直すことがメリットになってくるのか、という質問からお答えします。その質問に対して、まずは、この「別居の未婚の子」という魔法の言葉を理解する必要が出てきます。

この「別居の未婚の子」とは、保険の対象に含まれる範囲を表すのに用いられる言葉で、つまり、田中さん家族のお父さん(55歳)が、東京で火災保険に加入している際に、その火災保険の範囲には、名古屋で働いている田中さんの長男(未婚:28歳)も含まれる、というわけです。

そして、この言葉のすごいところが、別に「国内に限る」とは書かれていないのです(基本的には)。つまり、東京で暮らす田中さんのお父さん(55歳)の次男(未婚:25歳)が、ベルリンで留学中にも、依然として効力を発揮し続ける、というわけです。

ここで、別の質問が生じてきます。「でも、火災保険や自動車保険は、国内の住居や自動車を守るための保険で、海外にいる人には関係ないじゃん」という真っ当な質問です。

基本的にはその通りで、火災保険は国内の家屋を守る保険ですし、自動車保険は国内の自動車事故に対する保険です。ですので、海外の住居が焼けたり、海外の自動車事故に対しては、まったく別の保険を掛ける必要があります。

ところが、こうした保険契約には、オプション契約が付いており、そうした細かいオプション契約は、実は海外でも有効なものがあるのです。

有名どころでは「個人賠償責任保険」です。火災保険、自動車保険に加入している場合にオプションで付けられる特約で、記名被保険者やその家族、別居の未婚の子が犯した賠償責任を伴う事故に関して、補償される、というもので、多くの会社では「海外における事故」も対象です。

というわけで、海外でいちいち賠償責任保険に入りなおさなくても、実家の両親の保険証券の補償内容をちょっと保険会社に変えてもらえば、留学中の娘、息子の海外における賠償責任事故が保証されるようになるわけです(ただし、注意しなくてはいけないのは、大学やビザ関連で賠償責任保険が必要な場合、こうした日本の保険会社の保険では認めてもらえないケースがあります)。

他にも、火災保険のオプションで「携行品損害保険」というものがあり、これも、多くの場合で国外が対象になっています。つまり、海外留学2年目の息子が、デュッセルドルフでカメラを落として壊してしまっても、それは保険支払いの対象になる、というわけです。

こうした「特約」は、保険会社によって規定がまちまちですので、もしこうしたケースに該当する場合、複数の保険会社の商品を取り扱っているような保険代理店に連絡し、契約内容を見直してもらいましょう。

保険を見直さないデメリット

続いて、国内の保険を見直さないと、掛け金を損したり、最悪の場合保険金がおりなくなったり、というトラブルも発生しますので、どういったケースにそうなるのかを見ていきましょう。

よくありがちなのが、家族で自動車保険に加入していて、息子も乗るので、年齢制限を低く設定している、というケースです。この息子が家を出て、海外に居を移す場合、この年齢制限を息子に合わせる必要がなくなりますので(別居の未婚の子は、年齢の制限を受けなくなる)、これだけで保険料が年間で数千円~万円単位で安くなります。

また、記名被保険者、という問題も存在します。例えば、自動車保険で家族全員が自動車に乗っている場合でも、筆頭に名前を連ねるものは、基本的に「一番多くその自動車を使う人」です。その名前を長男のままにしていると、告知義務違反になり、最悪の場合保険金が下りないこともあります。

ここに紹介したのはあくまで一例で、他にも海外渡航中の中断特則、国内の生命保険を海外でかけっぱなしにする方法、など、保険関連には様々な面白いやり方が存在します。

これらは、別に違法でもなんでもなく、保険約款に基づいて、海外留学生である我々がうまく利用しているだけですので、まったく問題はありません。ただし、こうした裏技も、保険知識がなければ活用できませんし、下手におこなおうとすると痛い目を見ますので、最終的には保険代理店とよくよく相談し、どんな場合は海外でも有効なのか、などをしっかり理解しておく必要があります。