人生のモラトリアムともいえる「ワーキングホリデー」が、20代の人々の間で人気です。私はワーホリでドイツに来たわけではありませんが、一度くらいしておけばよかったな、と思うこともあります。
今回は、ドイツでワーホリをする際の魅力、そしてデメリットなどについてまとめていきたいと思います。
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ドイツのワーホリは魅力的?ワーホリ前に知っておくべきこと
はじめに、私のワーホリへのスタンスを述べておきます。基本的に、私はそこまでがちがちのキャリア人間でもありませんし、意識の高い人間でもありませんので、特に理由も目的もなくふらりと海外にワーホリに来ること自体には賛成です。人生頑張ってばかりだと息が詰まってしまいます、私も突然思い立ってどこかに旅行にでかけることはありますし。
ただ、なまじワーホリで会社を辞めてなまじ悲惨な経験をした人々をたくさん知っているので、ワーホリへ渡航する前にある程度「リスク」を知っておくことは必要かと思います。それが受け入れられるのであればいいでしょう、受け入れられないで「こんなはずじゃなかった」と後悔するくらいなら、初めから来ないほうがいいと思います。
ですので、ワーホリ後に後悔する人と満足する人の違いを先にまとめておくと、「メリットとデメリットを正確に把握して、過度な期待をしない」ことだと思います。
ワーホリのメリット
1.息抜きになる
まず、最大のメリットは息抜きです。特に、日本で数年会社勤めをしたことのある人であれば、ある種の閉塞感に息がつまっていると思います。この閉塞感から逃れんがために、多くの人々が海外を目指します。
心理学的にも、新しい文化との折衝は確かに認知レベルで視野を広めます。現地のドイツ人との交流を通じ、まったく知らなかった自分の一面にも気づくかもしれませんし、私も長いドイツ生活を経て、社交的になった気がします。
また、ドイツには自然が豊富で、街の中心からちょっと離れると自然や森、川などに触れることができます。そうした環境で、日本の仕事で疲れた精神をゆっくりと癒すことが可能です。
2.語学力が身に着く
もちろん、現地で何をするかにもよりますが、語学を学ぶ環境は日本よりも整っています。語学学校に通う、アルバイトをする、現地のドイツ人と遊ぶ、などなど、生活を通じてドイツ語を身に着けていくことが可能です。
特に、「ドイツ語を学ぶ」ことに関すれば、ドイツに住むことが理想的な環境であるのは間違いないでしょう。ただ、その場合自分からすすんで様々なコミュニティに顔を出していく必要がありますが。
3.現地の人々と仲良くなれる
ドイツ人は基本的にフレンドリーです。大きい町に行けば大抵「日本-ドイツ」コミュニティがありますし、逆に小さい都市に行けば、それはそれで日本人は珍しいので重宝されます。ですので、現地の友人をつくるのに、ドイツは比較的難易度の低い国だと言っていいでしょう。
現地の友人を作ることで、いわゆる「他国の文化」を学ぶことができます。これは、日本で学ぶことは難しいでしょう。確かに、日本にも外国人はいますが、彼らはどちらかというと「日本化」された外国人ですので、いわゆるコミュニケーションがイージーな部類になります。
対して、ドイツで接するドイツ人はこてこてのドイツ人ですので、中にはコミュニケーションに難を感じるケースも少なくないでしょうが、こうした文化的障壁を通じ、他国の文化に寛容になることができると思います。
ワーホリのデメリット
1.キャリアアップには結びつかない
まず、最大のデメリットですが、基本的にワーホリしてもキャリアアップには結びつきません。私はドイツのまあまあ有名な大学院をそこそこの成績で卒業し、ドイツ語も英語もしゃべれますが、それでも、現地での就活には苦労しましたし、日本時代と比べて手取り年収は下がりました。ドイツでの就職を目的としてワーホリすることはあまりお勧めできません。
ちなみに、前職の経験はリセットされ、まったく別の業種で一からスタートすることになりました(伝わるか分かりませんが、幽遊白書で言ったら飛影が邪眼を入れて、A級妖怪からC級に格下げをくらったような)
3年かけて大学院を出て、ドイツ語もしゃべれてこのざまですので、1年ワーホリをしたところで身に着くものがどうなるかはお察しです。これは、ドイツに限らずどこの国でもそうでしょう。飲食店や職人系の職でこちらに残る人はいますが、いわゆる「企業勤め」として現地にとどまるには、結構な苦労が必要です。
日本に帰ればキャリアアップできるか、と言ったらそうも甘くありません。まず、一年かけて習得できるドイツ語レベルはたかが知れていますし、職場経験がなければいわゆる「ビジネスで通じる」ドイツ語とも見なされません。ついでに、ドイツ語を求めている日系企業なんてそう多くはないでしょう。
仮に、本気でキャリアアップを目的とするのであれば、中国系、あるいは英語圏へのワーホリを目指したほうが良いかと。いや、そちらとてキャリアアップにつながるとは限りませんが、ドイツ語よりはまだ救いがあります。
ですので、ワーホリに来る場合は最初から、一年の夏休みをとって遊びに来た、と考えたほうが早いでしょう。キャリアアップに結び付くことはめったにありません。
2.出費がかさむ
ワーホリ中は、語学学校で勉強→現地でバイトやインターン、などを考えている人が多いかと思います。まず、インターンで通用するレベルのドイツ語は、そんな短期間には身に着きません、無給でホテルや飲食店のスタッフとして働くようなものはありますが。
バイトは、ドイツ語のレベルがそこまで高くなくても行えます。ドイツの最低賃金が時給1000円くらいですので、毎日働けば現地の滞在費くらいは稼げると思います。ただ、大きな都市にいないとなかなか仕事のあてはありません。
さて、ドイツで一ヵ月生活するのに必要な生活費は、大体800ユーロ程度を見積もっておいたほうが良いでしょう、つまり10万円程度。1年で120万円、語学学校や、他の都市への旅行なども考えたら、150万円くらいあると楽しいワーホリ生活がおくれるのではないでしょうか。つまり、先ほどのデメリットと合わせると、150万円くらいかけて海外に遊びに来たようなものです。
3.日本になじみづらくなる
サザエさんシンドロームという言葉をご存知かと思います。日曜日の夕方、月曜日の出社のことを考えて鬱になる、というものです。休日は楽しいものですが、やがて終わりが来るときには、それは苦痛へと変わるのです。
さて、たかが2日の週末休でさえこうなのですから、1年も期間をかけてワーホリし、夏休み環境に慣れてしまうと、日本に帰ってきたときに体がどんな反応をするかは簡単に想像できます。おそらく、日本の会社文化に再び溶け込むまで、長いリハビリ期間を要するでしょう。
また、当然のことながら、日本には日本の文化がありますので、「海外ではこうだ」「海外を真似すべきだ」と声高に主張しようものなら、ただ単に変な人扱いされて会社から雇われることはないでしょう。そんなに海外が好きなら、海外で就職すればいいじゃないか、となります。
まとめ
さて、今までメリット・デメリットをつらつら書いてきましたが、最後に「ワーホリとは何なのか?」をざっくりまとめます。つまり、「大金をかけた人生の夏休み」というのが私の思うワーホリの本質です。
もちろん、人生経験は深まるでしょう。もちろん、語学力も高まります。新しい文化との交流を得て、新しい人生の目標が見つかるかもしれません。そして、もちろん、偶然にもドイツ人のパートナーを現地で見つけたり、カフェで働いていたらドイツ人の社長にスカウトされる、といった映画の中のような話があるかも知れませんが、基本的には「大金をかけた夏休み」です。
ワーホリ後に満足している人は大抵、ワーホリにそこまで期待していない人たちです。ワーホリ後に来て後悔が残ったという人は、大抵、ワーホリにキャリアアップなどの希望を抱いてきた人々です。そりゃ、夏休みに海外旅行に行くのに、キャリアアップを求めていくのはお門違いというものでしょう。