ドイツ人が一人で日本に旅行するはなし(メール・準備編)

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今回、私の友人のドイツ人が一人で日本旅行をすることになりましたので、その経過を追ってみます。

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日本に旅行するドイツ人

統計的な資料が、手元にあるものは少し古いので参考にならないのですが、欧州から日本にくる旅行客を比較してみると、ドイツ人旅行客の数は割と少なかったように思います。確かに、初対面で私が日本人だと名乗ると『oh, いい国ですね!いつか行きたいデース!』とリップサービスをかましてくるドイツ人はたくさんいますが、実際に訪れたというドイツ人を見たことは余りありません。

彼らの言い分としては、まず『高い(物価、ホテル、飛行機などひっくるめて)』次いで『遠い(金銭的、時間的に)』そして『英語が通じ無さそう』というものです。まあ、私がドイツ人だとしても、多分同じ感想を持ったと思いますし、私も学生時代にドイツには来たことがないので、人のことは責められません。

さて、そんな障壁を乗り越えて日本に旅行にくるドイツ人(欧州人)にはどんなタイプがいるのか、という内訳ですが、私の個人的な調べによると、純粋に日本の文化のみに興味のある欧州旅行客の割合は、15%くらいだと思います。

その他の内訳ですが、日本の料理:これは割とどこへ行っても評価が高いです。日本の漫画やアニメ:これ目当ての外人は多いですが、あまりかかわってもろくなことがないので私は避けています。単なるパートナー目的:多いです。

今回日本に旅行に行くことになった私の友人は、非常にレアな『日本の文化に興味のある』ドイツ人です。かなり意識が高く、まず、ホテルへの予約をメールですることから始めました。面白いので、以下その経緯を書いていきます。

外国人にとっての難関:敬語

そもそも私も、社会に出て企業で新人研修を受けるまで、第一人称は『自分』が礼儀正しいと思っていましたし、日本人の全ての成人人口を見渡しても、正確に敬語を使いこなせる日本人なんてそう多くは居ないと思います。

なにを勘違いしたのか、はたまたゲルマン堅気の古風な精神がなせる業か、彼曰く『日本は礼儀正しい国なので、ホテルの予約も心のこもったメールを送るべき』といって聞きません(インターネットの予約サイトを使えばいいのに)。というわけで、彼の敬語講座に付き合うことになりました。

ちなみに、彼の日本語力は二年間勉強し、簡単な日常会話であれば日本語でこなせる程度のレベルです。断っておきまずが、私の敬語も100%正しい自信はありませんので、もし日本語の講師の方などがこの記事を読んで、間違いに気づいても、あまり指摘しないでいただけるとありがたいです。

1.ドイツ人の疑問

Heute habe ich per Email ein Hostel in Osaka reserviert. Ich frage mich welche Sätze man im Japanischen verwendet, wenn man einen Brief oder eine Email schreibt (z.B. Hotel Reservierung).
1. Wie fängte die Email an?: “Sehr geehrter Herr/ Frau
2. Muss man sich erst selber vorstellen?: “Mein Name ist; Ich bin ein Reisender aus Deutschland”…
3. Wie beendet man die Email?: “Mit freundlichen Grüßen; Viele Grüße”…
4. Welche Sätze werden häufig in diesem Kontext verwendet?

『今日、大阪のホテルからいくつか返信をもらったけど、この場合、どんな日本語の定型文を使用すべき?1.メールの冒頭の箇所、2.自己紹介のやり方、3.メールの締めの文句は?4.この流れで行くと、他にどんな定型文があるの?』

しょっぱなからこんな感じで質問されました。ご存知の方もいると思いますが、ドイツのメール・手紙には、ある程度決まりきった冒頭文や、締めの言葉があります。なので、彼はそのような冒頭文や締めの言葉が日本語のメールにもあると思ったようで、要するにそれを教えてほしい、というわけです。

2.私の回答

●●旅館 御中
お返事をいただきましたこと、まずはお礼申し上げます。
このたび、大阪を観光の目的で訪れる、ドイツ出身の○○と申します。
日本語はすでに2年ほど勉強しており、簡単な日常会話であれば日本語で対応が可能です。
Blablabla…
改めまして、●●旅館様を訪れることを心より楽しみにしております。
お忙しいところのご対応、まことにありがとうございます。

それでは、失礼いたします。
○○(名前)

私だったらこう書くよ、という例を提示してあげました。勿論、日本語の手紙にも拝啓、敬具などの提携文言はありますが、さすがに客からホテルへのメールでそこまでする必要はないでしょうし、とりあえず私の思いついたのが上記の例です。

3.ドイツ人からの質問

ich versuche gerade deinen Text zu übersetzten (ich bin überrascht, dass man als Kunde so höflich schreibt…):
お返事をいただきましたこと (Was bedeutet das? man bittet um eine Antwort?)
まずはお礼申し上げます = zuerst möchte ich mich Ihnen vorstellen
このたび、大阪を観光の目的で訪れる = Zweck meiner Reise nach Osaka ist Sightseeing
ドイツ出身の○○と申します = ich stamme aus Deutschland und heiße (bescheiden höflich) ○○
すでに + おり = schon, bereits
日本語はすでに2年ほど勉強しており = ich lerne bereits seit 2 Jahren Japanisch
対応が可能 = ist es mir möglich zu kommunizieren
簡単な日常会話であれば日本語で対応が可能です = Im kontext von einfachen Alltagskonversationen ist es mir möglich mich zu verständigen.
改める= neu machen (was bedeutet das in diesem Kontext?)
旅館様を訪れることを心より楽しみにしております = ich würde mich freuen Ihr Ryokan zu besuchen
お忙しいところのご対応 = das Gegenteil von einem hektischen Ort (verstehe den Sinn nicht)
まことにありがとうございます = Vielen herzlichen Dank
失礼いたします = ich bin unhöflich und beende diesen Text…

『ちょっと君のメールを自力でドイツ語に翻訳してみたんだけど・・(というか、日本のお客はこんなに馬鹿丁寧でなくてはいけないのか)
お返事をいただきましたこと→(これはなんて意味?返事を依頼してんの?)
まずはお礼申し上げます→(まずは、自己紹介いたしますってこと?)
このたび、大阪を観光の目的で訪れる→(私の大阪旅行の目的は観光、って訳でいいの?)
ドイツ出身の○○と申します→(ドイツ出身であることと、自分の名前名乗りの丁寧な形?)
すでに、おり→(すでに、ってこと?)
日本語はすでに2年間ほど勉強しており→(私は2年間日本語を勉強している、って意味?)
対応が可能→(コミュニケーション可能、ってこと?)
簡単な日常会話であれば日本語で対応が可能です→(簡単な日常会話であれば日本語でコミュニケーションできますよ、って意味で合ってる?)
改める→(新しくする??この文脈での意味が良くわからん)
旅館様を訪れることを心より楽しみにしております→(おたくの旅館を訪れることを楽しみにしてるよ、って意味であってる?)
お忙しいところのご対応→(忙しい場所の対義語、って意味?意味わからん!)
まことにありがとうございます→(まことにありがとうございます)
失礼いたします→(私はとても無礼で、そして文章をここで切り上げるよ、ってこと??)』

というわけで、一部の日本語は自力で理解できたようですが『お忙しいところのご対応』を『忙しい場所の対義語』と訳しているあたり、やはり若干テンパっている様子です。

あとはこのあと『おる』と『いる』の違いについて聞かれたりと、結局総合的に理解してもらうために随分と時間がかかりましたが、なんとかホテルの予約はできたようです。古風な考えの持ち主で、現地に行ったら英語は使わずに日本語でやり抜くと言って聞きませんので、頑張ってもらいたいと思います。