人間は、後天的に様々なことを学んでいくことができる生き物です。かたや、生まれ持った気質、一部の性格など、三つ子の魂百まで、というように、一生涯付き合っていくものもあります。
我々は、生まれてくる国や地域を選ぶことはできませんが、自分の力で後から変更することは可能です。生来の自分の気質、性格にあった環境、組織に魅力を感じる理論のことをP-E fit Theoryと言い、マネジメントの分野でも多く利用されてきています。
よく、多くの方から「ドイツは住みやすい環境にあるのか」「勉強しやすいか」という質問をいただくので、今回はその回答として、「ドイツは日本人にとって住みやすいか」というテーマについてまとめていきたいと思います。
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”その国の魅力”とは何か
まず、結論から先に述べると、ドイツが住み心地が良いと感じるかどうかは、その人の特性によります。
このスポーツは楽しい、この芸能人が好きだ、この食べ物は美味しい、などといった主観的な価値基準と同様、どの国が住み心地がよいのか、居心地が良いのか、などは、実際のところその人の性格によるものが大きいです。
もちろん、その国の教育水準、医療水準、治安、経済指標などは、数値化して判断することができます。しかし、実際にその環境が本当に住み心地がよいのかは、こうした客観的な数値ではなく、むしろ「自分の性格や気質との適合」から判断する必要があります。ようするに「この国は魅力的だ」ではなく「この国は私にとって魅力的だ」です。
例えば、日本と比べてほとんどすべての指標において、北欧諸国はいわゆる「住みよい」国としてランク付けされています。にもかかわらず、北欧へ移住する日本人の割合はほんの一握りです。
そもそも、我々日本人が比較的「リスクを避ける(risk-averse)」「不確実性を避ける(uncertainty avoidance)」傾向にありますので、国外に居住すること自体にすでに魅力を感じない人が多いのが理由の一つです。もしかしたら、実際のところ住んでみれば居心地がいいと感じるのかも知れませんが、そこまでのリスクを背負ってまで移住したくない、という気持ちのほうがおそらく優っています。
日本の会社は閉鎖的だ、と言われていますが、かといって外資系企業の人気がものすごい高いわけでもありません。日本人の中にはキャリアや給料に重きをおく人間もおり、そういった人々は傾向として外資系企業を選びますが、そうでない人にとっては実力主義の世界は居心地が悪いでしょう。
この世にはすべての人間の欲望を充足させるような理想郷は存在しません。つねにその組織や環境の魅力は、個々人の主観的な判断基準に基づいています。ですので、私個人からして「ドイツは魅力的かどうか」と聞かれたら、「ご飯のまずさに寛容であれば」「変化を好むのであれば」「新しい文化や意見に対してオープンな性格ならば」といった具合で条件づけでしか答えようがありません。
以下、私の思うドイツを心地よいと感じる人の性格です。
- リスクに関して寛容である
- 異国の文化に対してオープンである
- 太陽が1ヵ月見えなくても大丈夫(ドイツの冬は寒くて、暗い)
- 面の皮が厚い、恥知らず(いい意味でも、悪い意味でも)
- いかついドイツ人に怒鳴られても気にしない、口げんかしても気にしない
なんかこう書くと、日本の社会で求められている人間像と正反対のようですね。まあ、あくまで私の意見ですので、参考までに。
自分に適した場所を求めて
ですので、人によってその国の評価が正反対になることも多々あります。あるドイツ人は「日本の会社でなんてもう絶対働きたくない」と言って帰国していきましたし、別のドイツ人は「日本の会社組織は素晴らしい」と言ってかれこれ20年以上滞在しています。
これはドイツに当てはめても同じことが言えるでしょう。おそらく、ある性格をもった日本人にとってはとても住みやすい環境にあるかもしれませんし、ある性質の日本人にとっては地獄かも知れません。日本で成功した人がドイツでも成功するとは限りませんし、逆に日本で鳴かず飛ばずだった人にドイツの水があうかもしれません。
ですので、あまり「ドイツ」が住み良い国かどうか、という問題は置いておいて、自分が適応できるかどうか、というところから考えを巡らせてみたらいいかと思います。どこの国でも差別はありますし、ご飯がまずいなど冬が寒いだの色々嫌なところを挙げればきりがありません。この世に100点満点の国なんて存在しません。結婚と同じで、お互いのマッチングです。