ドイツ人と日本人は似ている?国民性の違いを検証する

ドイツ人は日本人とよく似ている、ということがよく言われています。お互いに第二次世界戦後の焼野原から経済的復興を遂げたという点もそうですし、自動車産業が強いという点などが挙げられます。実際に、社会心理学者のHofstedeの国民性指標を使って判断すると、ドイツ人は日本人から見て二番目に近しいキャラクターをもった国という結果があります。

しかし、本当にそうでしょうか。今回は、ドイツに4年間住んでみたうえでの主観的考察と、多少の学術的なデータを交え、ドイツ人と日本人の違いについてまとめていきたいと思います。

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文化的差異とはなにか

もちろん、「すべての日本人はこうである」「すべてのドイツ人はこうである」という決めつけはできませんし、中には日本人らしいドイツ人もいれば、ドイツ人らしい日本人もいます。

ただ、その国の国民性というものは、ある程度その国の風土、歴史、文化に根差したものであり、やはり特色として、あるいは傾向として、差異が生じることは否定できません。例えば、日本の文化は一つに「恥の文化」である、と言われています。要するに、日本人を日本人たらしめている社会的規範というものは、「恥」という概念にある程度立脚している、ということです。

「場合によっては殺人者でさえも許されるが、名誉を傷つけられることは許されない」と、「菊と刀」という日本人論の中で、著者であるルース・ベネディクトは小説の一説を抜き出し、日本人における恥、名誉の持つ社会的規範力を強調しています。

一方で、西欧文化を秩序立てているものは、キリスト教文化による「罪と罰」の概念です。「汝殺すなかれ」と、人を殺していけないのはそういう決まりであり、神様の教えで、それに背けば罰が与えられる、ということです。

これは一つの一例ですが、このように、その人々の育った文化、歴史的背景などから、その人々の性格、国民性はまるでワインのように長い年月をかけて醸成されていくものです。こうした、文化的な差異に根付く違いというものは、ファッションや言語のように、ぱっと見の判断、1~2回話した程度では決めることができません。こうした目に見える部分は、あくまで氷山の一角、というわけです。

cultural icebarg

https://www.languageandculture.com/cultural-iceberg

以下、ドイツ人と日本人の類似点と相違点をまとめていきます。

似ている点

1.悲観的である

まず、German Angst(ドイツ的不安)という造語ができるほどに、ドイツ人は将来に対する不安を強く抱く民族のようです。ですので、環境汚染問題、難民問題など、こうした先の見えない漠然とした不安に対して強い恐怖心を抱きます。

同様に、日本の東日本大震災で福島問題が発生した際も、ドイツ人のパニックは半端なものではありませんでした。現在でもドイツ中のいたるところに「原発反対!」の可愛いステッカーが貼られています。

確かに、スペイン人(常に楽観的)、ドイツ人と自分の三人で話していると、ドイツ人は常に慎重です。

町中に張られている原発反対のステッカー

2.長期的スパンで物事を考える

上述の悲観主義的な部分と若干重なりますが、わりと物事を進めるにあたって、長期的なスパンでとらえる傾向にあります。グループワークを進めるにも、いついつまでにここまで仕上げて、いついつまでに完成させて、いついつまでに・・・といった具合で、この仕事の進め具合は同じくきっちりした日本人にとって非常にやりやすいです。

これが、ラテン系の人種と比較すると、ドイツ人が日本人と似ていると思える最大のポイントかも知れません。

3.オタク気質である

昨今、ドイツの痛車が日本でもニュースになっていましたが、要するに、ドイツ人は一つのことに情熱を傾ける傾向が非常に大きいです。別にアニメ、漫画に限らず、それは古武道であったり、ガーデニングであったりと、とにかく自分の好きなことを、例えそれがメジャーな趣味でなかったとしても、ひたすらやりぬきます。そして、オタク仲間に自慢したがります。

コスプレにも力を入れる人は多く、それゆえ、デュッセルドルフで毎年開催される「日本デー」には、毎年ドイツからだけでなく、ヨーロッパ中からアニメ・漫画オタクが集結します。

ドイツのコスプレイヤーたち

デュッセルドルフで開催される日本デーの公式サイト(写真出典)

正反対な点

1.感情表現豊かである

日本人の美徳としては、公の場で感情を表現することは子供っぽいこと、恥ずかしいことだとされています。一方で、ドイツを含め、欧米では非常におおらかに彼らの感情を表現します。機嫌が悪い時にはすぐわかりますし、よく笑い、恋人に会えばその場で抱き着き、人目をはばからずに泣くことも辞しません。

2.我が強い・融通が利かない

他のヨーロッパ人に比べ、特にドイツ人にその傾向が顕著だと思うのが、自分の主張を譲りません。意見が分かれた場合には、ひたすら自分の意見を主張し、集団の場で日本人の奏でるようなハーモニーをまるっきり無視します。そして、その主張が間違っていても、彼らは謝りません。

このドイツ人の我の強さは、先ほどのGerman Angst同様、German assertivenessとしてドイツ人を表す特徴的な性格の一つとしてよく使われます。

3.忖度しない

日本人の「察する」文化はドイツにはあまり存在しません。日本人なら察するような場面でも、彼らは気が付きませんので、自分になにか主張したいことがある場合、それをすべて口に出して伝える必要があります。

例えば、相手がうるさいので静かにしてもらいたい場合「今、私勉強中なの」と言えば、日本人なら察するでしょう。ドイツ、というか欧米全般では「今、私勉強中なの。だから静かにしてちょうだい」と最後まで伝えないと、汲み取ってもらえません。

4.二元論で物事を考える

日本人のように「まあまあ」「グレーゾーン」「お互いに悪いところもあったよね」的な、譲歩、中庸、という概念がありません。ドイツでは、物事は善悪、白黒、0か100かに分かたれているところが多く、これは私が一番苦労するところです。

5.周りの目を気にしない

日本人であれば「これは恥ずかしい」と思ってブレーキがかかることでも、ドイツ人はお構いなしです。キャンパス内で上半身裸で日光浴をする、講義中にご飯を食べる、物も買わないのに本屋に突撃してトイレを貸してくれるか尋ねるetc…。

日本人では「あ、迷惑だな」と思ったことはやりませんが、ドイツ人はなんでもかんでもやります。だって、迷惑だと誰かが思ったなら、それを思っているだけでなく直接伝えるのがドイツの文化ですので。

飛び込むドイツ人


https://presse.karlsruhe.de/db/stadtzeitung/jahr2015/woche24/geschichte_hundert_jahre_sonnenbad.html

仕事文化に見るドイツと日本の違い

こうした性格・性質上の違いが如実に浮き彫りになる場面が、おそらく仕事やチームワークを必要とするような状況だと思います。例えばBrannen and Salk(2000年)はドイツと日本の会社からなるジョイントベンチャーの立ち上げにおいて、どのような性格的な違いがトラブルを招くのか、というリサーチを行っています。

日独仕事文化の違い

出典:Brannen and Salk, 2000

似ている点:

  • 組織内のヒエラルキーが重要である
  • 不確定要素に対して慎重である
正反対の点:

  • 個人行動(ドイツ)vs集団行動(日本)
  • 迅速で効率的な意思決定(ドイツ)vsコンセンサス重視の意思決定(日本)
  • 規則は絶対である(ドイツ)vs時と場合による(日本)
  • 公私混同しない(ドイツ)vs公私混同する(日本)

ここに述べられている仕事上でのドイツ人の特徴は、私が先ほどまとめた日本人・ドイツ人の相違点、共通点の部分とある程度に通った部分があるのかと思います。スケジュールをたて、仕事を組み立てていく部分については似ていますが、ハーモニーを尊重しない、融通が利かない、調和より効率を求める、という部分は、日本人とはなかなか相いれない部分ではないでしょうか。

最後に、国際ビジネス上の講義で習った、国民性の違いを表す面白いデータでしめたいと思います。

世界各国、職場の人間に頼みごとをするときのお願いの仕方

アメリカ:Reciprocity(相互扶助) 「今度助けてあげるから、お願い!」
スペイン:Linking (繋がり)「友達だろ、お願い!」
中国:Authoritarian (権威主義)「ほら、上司も手伝ってやれって言ってるし、お願い」
ドイツ:Consistency (一貫性)「我々の社内のルールによると、同僚を助ける義務が生じるらしいので、手伝って」