日本にはないドイツ語の表現として、『Urlaub』という言葉があります。『Urlaub』は、辞書には『休暇』『有給休暇』と書かれていますが、おそらくこれではあまり意味が伝わりません。
もともと言葉以上に、環境が異なるので直訳不可能なドイツ語もたくさん存在するのです。今回は、ドイツに独特な(というよりアジア諸国に存在しない)『Urlaub』という概念について紹介します。
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ドイツ人とUrlaub
ドイツ語における「Urlaub」とは、基本的に会社や学校などの長期休暇を指して言います。
我々日本人は会社勤めをしているときに、大体お盆に5日(土日と連続させれば9日)の休みがもらえればいい方ですが、これは西洋諸国と比較するときわめて少ないほうで、お隣の韓国をすら下回っているというデータがあります。
例えば、フランスやスペイン、ドイツなど西洋諸国では、年間の有給休暇が30日もらえます。これらをどのように使うかは個人の自由ですので、例えば8月の土日を除くすべての日に利用すれば、丸々一ヵ月夏休みが取得できる、というわけです。
さて、このUrlaub期間中は、彼らは仕事をしません。どんなに急ぎの用があっても休暇中の担当者には繋いでくれませんし、どんなに繁忙期でも平気でUrlaubを使います。ここら辺はさすが、オンとオフの切り替えのはっきりしたドイツ人らしいです。
このUrlaubの使い方は人によってまちまちのようですが、基本的には旅行・息抜きにあてられます。中には、この休みを使って語学研修に海外に行く人などもいますが、基本的に、オンとオフを切り替えるドイツ人らしく、この休暇中は仕事から精神的にも物理的にも離れ、どこかへ旅立っていきます。
Am häufigsten fahren die Deutschen mit Partner oder Partnerin in den Urlaub. Ein Viertel (24 Prozent) ging bei der letzten Urlaubsreise mit Kind und Kegel auf Tour. Die meisten buchen ihren Urlaub immer noch im Reisebüro. 12 Prozent haben schon einmal im Internet gebucht. Die beliebtesten Urlaubsunterkünfte sind Hotels, Pensionen und Ferienwohnungen
『ドイツ人が(Urlaub休暇中に)もっとも頻繁におこなうのは、彼氏・彼女との旅行である。ドイツ人の約4分の1が、直近の旅行では家族連れだったと答えている。もっとも多いのは旅行会社での旅行予約だが、12%の人々はインターネットでも予約する。もっとも嗜好される宿泊施設は、ホテル、ペンション、賃貸別荘などである。ドイツ国内での旅行が大多数であり、特にバルト海側への旅行は人気が高い。また、ドイツ国内を旅行する人たちの31%の人たちは、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン(ドイツ北部)やメークレンブルグ・フォーアポンメルン州(同じくドイツ北部)で過ごす』
上述の記事のように、夏場に避暑地として過ごしやすい国内の旅行先が嗜好される他、他の欧州地域のオーストリア、スイス、フランス、あるいは少し足を延ばせばタイやベトナムなども人気の旅行先のようです。
休暇明けの悪夢
さて、年間の夏休みがわずか5日の我々からしたら、こうしたドイツの夏休み(Urlaub)は天国のように思えますが、休みが長い分、仕事へ復帰する際の落差も大きいものがあります。
Kennen Sie das: Je schöner der Urlaub war, umso frustrierter sind Sie danach an Ihrem ersten Tag auf der Arbeit. Experten bezeichnen dieses Gefühl als ʺPost Holiday Syndromʺ
「こうした事実をあなたは知っていますか?長期休暇が素晴らしければそのぶん、休み明けに会社に復帰する日が苦痛になるというお話です。専門家は、この現象を『Post Holiday Syndrom(休暇後症候群)』と呼びます」
厳密にはサザエさんシンドロームは毎週日曜日になるとサザエさんの歌とともにやってくるものですので少しニュアンスが違いますが、まあ休日後の出勤が嫌になるということで使いました。
こうした楽園のような夏休みと、職場への復帰との落差があまりに大きく、多くのドイツ人が絶望を覚えるようです。そう考えると、あまりに長すぎる休みも考えものです。
ちなみに、ドイツは夏休みが多くなんてすばらしいんだ、日本の労働環境は最悪だ!と考えている人のために、一つ、面白いデータを紹介します。
国ごとの祝日の数ですが、日本の場合ドイツと比べて祝日の数が多く、年間およそ15日もの祝日があります(ドイツは9日間)。ちなみに、大晦日や三が日はここには含まれていませんので、日本の場合会社にこなくていい日はもう少し増えるはずです(ドイツでは三が日は祝いません)。
ですので、日本でも会社から賦与される「有給休暇」を消化することができれば、実際のところドイツとの差はそこまで大きくはなくなります。この有給休暇、を消費できる環境にないのが現在の日本の会社環境ですが。
面白いことに、最近ドイツでは休暇中に職場にきた自分あての仕事メールを全て削除しておいてくれる画期的なプログラムが登場したそうですが、これまた日本では永遠に流通しないもののように思えます。
結局のところ、文化が違うので何とも言えませんが、なんにせよ私もいずれ『Post Holiday Syndrom』とやらを感じるほど長い休みがほしいものです。