最後のセメスターを迎え、ドイツの大学院についての感想

途中で日本に帰ったり、語学の研修を受けたりして、多少空白期間がありますが、時のたつのは早いもので、ドイツに来てからすでに4年近く経とうとしています。

ドイツに来たばかり、大学に入ったばかりのころと比較すると、ドイツや大学院に関する見方も随分と変わったように思えます。今回は、数年ドイツに住んで、大学院の授業を2年近く受講して感じたことなどについてまとめていきたいと思います。

スポンサーリンク

ドイツの大学院について感じたこと:卒業することの難しさ

特に今回の記事は、ドイツの大学院進学を考えている方などの参考になればいいと思います。まず、ドイツの大学院を一言で言い表すと「難しい」です。よく言われているように、日本の大学は入るのが難しくて、欧米の大学は出るのが難しい、と言われていることの意味を肌で実感しました。

まず、シラバスを見ると、推奨される勉強時間は、一科目につきおよそ150時間、と書かれています。セメスターは大体4か月ですので(4月~7月)、およそ一日一時間、その科目の勉強に時間を費やしてようやく足りる程度の話になります。もちろん一科目ではなく、1セメスターで推奨される科目数は大体5科目程度ですので、最低でも一日5時間くらい勉強しておかないと、試験の時大変な目にあいます。

ちなみにこの150時間、というのは、平均的なドイツの大学院せいがそれだけ勉強してそこそこの成績が取れますよ、という意味です。ドイツの大学院せいというのは、以前もどこかで説明しましたが、要するに大学をいい成績で卒業したエリートドイツ人たちです。TOEFLもみんな100点は平気で超えていますし、統計的、数学的な知識もばりばりついています。

そんな彼らが150時間勉強して、というのと、ドイツ語がネイティブではない我々が150時間勉強して得られるものは残念ながら違います。文献を読むにしろ、やはりスピードの差を実感します。

ちなみに、私の1学期目の成績はかなり悲惨なものでした。大学のホームページで自分の成績を探せるのですが、同期入学の40人のうち、ぶっちぎりの最下位でした。手前味噌ですが、私は日本ではそこそこの大学に通っていました。ただ、そんなプライドは一気に吹き飛ぶほどの衝撃を、最初のセメスターで受けたわけです。そして、大学院のセメスターは4セメスターしかないので、ここから挽回するのは楽ではありません。

落第のプレッシャーと後半の巻き返し

さらに、私の大学では「基礎科目」というものが5科目あり、そのうちの4科目を必ず取得しなくてはいけません。一つの科目ごとに受けられる試験の数は2回で、つまり5科目のうち、2科目落とした時点で、卒業が自動的に不可能になる、ということをまず1セメスター目の最後に知りました。

さらに、ドイツで就職するために、最低限必要なGPAは2.5です。これを満たさなければ、ドイツの大きな会社は見向きもしてくれません。というわけで、1セメスター目が終わった時点で、私はだいぶ焦っていましたが、それでも光明がいくつか見えてきました。

まず、情報は重要です。私の場合、友人づてに「一つの科目で悪い点をとったら、他の科目で上書きできるよ」という情報を入手しました。というわけで、私は4セメスターで卒業することを諦め、悪い点数の科目をすべて上書き削除するため、1セメスターのばす作戦に出たわけです。

さらに、試験は必ずしもそのセメスターに受験しなくてもいい、ということを知りました。例えば、2016年夏セメスターに受講した科目の試験を、2016年の冬や、2017年の夏に受けてもいいわけで、その場合、夏休み・冬休みを目いっぱい利用して試験勉強ができることになります。

こういう、ドイツの大学生であれば誰もが知っているような基本戦術を知らなかったため、私は痛い目を見ましたが、その後、巻き返すことに成功しました。

ドイツの大学院で得られる勉強以外のこと

重要なことを2つ挙げます。ドイツ的な考え方、そしてドイツ人の友人です。ドイツ的な考え方、に関して言えば、セミナーなどをとっていれば、いかに彼らが効率さを重んじて授業をおこなっているのかが分かりますし、いかにお役所的かも分かります。

ドイツ人の友人というものも、この学生である期間に作っておいたほうがいいものです。日本でも私は感じましたが、やはり大学を卒業し、会社に入ってからの付き合いというものは、多かれ少なかれどことなく「仕事絡み」であることが多く、普段のテンションで付き合える友人をつくるには、やはりキャンパスライフが一番です。

ドイツの大学院には様々なジャンルの人がいます。タトゥーを首から足まで入れている人、日本のアニメオタク顔負けのアニメオタク、黒人、中国人、ヒスパニック、元難民、子持ち、バツイチ、アラフォー、起業家etc..私も平均的な学生と比べると、アラサーで、すでに年を食ってからの入学でしたが、それでも似たような境遇の学生はたくさんいますし、外に出る機会さえ増やせば必ず友達を作ることは可能です。

日本の大学と同様、勉強はもちろん、それ以外にも学ぶことがたくさんあるのが大学院です。そこで新しい物事に挑戦し、学ぶ気力がある方であれば、おそらくどなたでも実のある勉強ができると思います。