ドイツの税関制度は、EUの中でも特に面倒だとされています。昨年あたりから税関でバイオリンを持ち込もうとして募集されたというようなニュースが多くのせられているように、EU外からの高級品の持ち込みについてはかなり厳しい側面を見せています。
ドイツ在住のバイオリニスト、有希・マヌエラ・ヤンケさん(26)が、ドイツのフランクフルト国際空港の税関当局に名器ストラディバリウスを差し押さえられていたことが、日本音楽財団(東京)への取材で4日、分かった。関税として約1億2千万円を請求されているという。
引用:日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0401Q_U2A001C1CR8000/
これは、持ち込みの場合もそうですし、郵送で日本から物品を送る場合もそうです。今回は、日本からドイツに物品を送る際の課税の注意点についてまとめていきたいと思います。
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日本からドイツに物品を送る際の注意点
日本からドイツに物品を送る際の方法としては、以前記事にまとめたことがあります。オーソドックスな方法ではEMSがありますし、急ぎでなく、かつ荷物が多ければ船便を利用すると言う手もあります。
荷造りをしていて、飛行機の積載をオーバーするので別途郵送したり、ドイツについてからやっぱりアレが必要だ、と思ってあとから送ってもらったり、と誰しも1回くらいは海外郵送を経験されるかと思います。基本的には、日本郵便か、ヤマトの国際宅急便で送る形になりますが、いろいろ送り方があって、禁制品も面倒くさいので一度目を通しておくとよいでしょう。
さて、まず前提条件として注意しなくてはいけないのが、ドイツのお役所の対応はかなり『人によって異なる』という点です。税関だけでなく、即座に罰金をとる警察と優しく注意してくれる警察の違いもありますし、当たり外れが大きい国です。
ですので、仮に同じやり方で郵送したとしても、一回目はセーフで二回目はアウト、ということもあります。今から紹介する方法はあくまで一般論ですので、必ずしも税関トラブルを免れるとも限らない点を注意してください。
日本からドイツに荷物を送る際は、何がダメなのかを調べるよりも『何が良いのか』を調べた方がよいです。以下、JETROの定めた『小口貨物の通関制度』上で、免税対象となる主な条件です。
- EU域外国の個人からEU域内の個人へ送る商業的性格を持たない小口の贈答品で価額が45ユーロ以下のもの
- EU域内への留学生の衣服、勉強道具および家具
他にも、婚姻に伴う贈答品や、遺産の相続なども免税対象となるのですが、あまり実用的ではないので、とりあえず使用可能性が高そうなこの2つだけ紹介します。なお、他の条件などが知りたい人は以下のJETROのリンクにて確認しましょう。
EUでは個人用の貨物や旅行者の携行品など、小口貨物については輸入関税が免除されます。理事会規則(EC)No.1186/2009で関税の免除のための諸条件が規定されています。
1.EU域外国の個人からEU域内の個人へ送る商業的性格を持たない小口の贈答品で価額が45ユーロ以下のもの
これが、日本国外からドイツに物を送るときに最も適用しやすい免税条件かと思います。『商業的な性格を持たない』とは何かときかれたら難しいのですが(というのも、ある程度税関職員の胸先三寸で決められるため)、一般的には『定期的に発送していないこと』『個人使用に限るもの』といった場合にこの免税条件が満たされるとされています。
例えば、ドイツではボールペンが高いから、学校の友達にボールペンを売ろう!というのは商業目的にあたります。
ただ、何をもってこれを証明するのかは難しいところで、特にできる工夫といったら『個人使用である』ことを強調するために、あらかじめ開封しておいたり、USEDの文字を入れて置いたりといったことがなされます。
また、念の為購入時のレシートなどを取っておく必要もあります。というのも、価額が45ユーロ以下であることを証明しなくてはいけないからです(ちなみに、価額とは減価償却された価格のことですので、一年前に100ユーロで購入した時計は、現在はもっと安い価額とみなされます)。
2.EU域内への留学生の衣服、勉強道具および家具
これには、先ほどの45ユーロルールが適用されません。ですので冬服などをまとめて発送するなどの場合にも、衣服であることを強調しておけば基本的には免税対象となり、上述の45ユーロしばりよりもスムーズに荷物を受け取ることが可能です。
ちなみに、例えば上記の『1』『2』に適合していても、以下のような物品に関しては郵送が不可能ですので気を付けましょう。
一部の例外を除き、原則的に個人消費用あるいはペット用の動物性製品(肉、肉製品、牛乳、乳製品)、魚製品(鮮魚、干物、塩漬け、燻製)を旅行者が域内に持ち込む、あるいは域外から域内の個人宛に小包で送付する、通信販売で域外から購入することは、動物の感染症の域内への流入を防ぐ目的で禁止されています(「動物性製品の個人用小包による欧州共同体内への導入ならびに規則(EC)No.136/2004の修正に関する欧州委員会規則(EC)No. 1285/2008」)。 なお、麻薬、医薬品、武器、爆発物、ポルノ類は、輸入禁止あるいは輸入制限の対象品目ですが、EUレベルではなく、各国の法規により規制されています。
もし税関で引っかかってしまった場合は
上述のように、ドイツの税関(zollamt)はわりと税関職員の胸先三寸で決められてしまうところがあるので、どんなに気を付けていても、運が悪いと税関に召集されてしまう可能性があります。
そうした場合、まずは通知の手紙をもとに、税関のあるところまで行く必要があります。税関の場所は、都市によってまちまちですが、基本的には郊外に設けられているケースが多く、港に面していたりします。
そこに、以下のものを携えて平日の営業時間内に向かう必要があります。
- 通達の手紙
- 身分証明書
- 商品のレシート(クレジットカードの明細)
『1.通達の手紙』『2.身分証明書』はともかく『3.商品のレシート(クレジットカードの明細)』に関しては必ずとも毎回あるとも限らないと思います。私の場合は、初めての際このレシートを持っていませんでしたが『次から持ってくるように』といって許してもらえました。
実際に税関に到着すると、通達の手紙を税関職員に見せたら交渉が始まります。『これは誰が買ったの?』『ちょっと中を見てもいいかな?』『これはいくらするの?』と、無表情の税関職員に矢継ぎ早に質問されて、あまりいい気持ちはしません。
私の場合は、ドイツに来たての頃コンタクトレンズを日本で買って送ったのですが、その価格が4000円程度+送料1500円で、ユーロ換算ではぎりぎり45ユーロに届くか届かないかという水準でした。
レシートが無いと言ったら『なぜないのか?』『クレジットの明細もないのか?』と問い詰められましたが、無いものは無いと5分くらい言い張っていたら、もう行ってよしと言われました。まあ、商品+送料でも5500円ですし、仮に税金を取られたとしても微々たる値段で、税関にとってあまり旨みがないと感じてくれたのかもしれません。
上述したように、税関でひっかかるか引っかからないか、あるいは関税をとられるかとられないかは、正直運の要素も大きいのですが、少しでも可能性を下げるために、やはり『個人使用の強調』『レシートの有無』などに留意する必要があります。