ドイツの大学院は実践的:国際マーケティングの授業をとったときの話

「文化」というのは様々な用途で使われる用語です。目に見える行動様式、常識や習慣なども文化の一環ですし、かたや、その国の思考に根付いた、より民俗学的、心理学的な意味合いをもった概念も「文化」とみなされます。

それゆえ、マーケティングの世界でもたびたびこの「文化差」を考慮に入れた戦略がとられます。今回は、ドイツの大学院のビジネスイベントで各国の学生に商品プロモーションを行った際の、国による差異などをまとめていきたいと思います。

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日本的なマーケティング、欧州的なマーケティング

日本で営業をしたことがある人ならわかると思いますが、基本的に、日本で顧客のハートをつかむために必要なのは「信頼性」です。これは、学術論文などによると、日本人の「リスク回避性(Risk-averse)」「不確実性回避(Uncertainty-Avoidance)」「長期的思考(Long-term oriented)」な性格から来ているものだと言われています。

これは何も、企業と企業の間の関係だけでなく、日本人の商品嗜好にも表れています。特徴的なものが、日本人の世界でも有数の「ブランド品」に対する拘りです。ブランド品自体には価値はそこまでありません。ただ「みんなが良いというもの」「名の知れたもの」を嗜好するのは、日本人的な不確実性を回避する正確によるものだと言われています。

ただ、各国がみな同じような考えをしているわけではありません。欧州企業間にあって、企業間の関係性は、日本のように長期的な関係と信頼に重きをおいたもの、というよりも、もう少しドラスティックな、ビジネスライクな部分に重きを置かれています。

特定のブランドへのロイヤリティというよりも、より商品自体の良さ、安さなどが受け入れられます。ドイツでは韓国の車をよく見かけますが、日本では全く見かけないのは、おそらくそのためでしょう。性格的に、ドイツ人はとことん合理的なのです。

さて、以前ドイツの大学院は「実践」と「理論」を兼ね備えた場である、と書きました。私が以前履行していたセミナーは、こうしたマーケティング理論を学んだあと、応用としてキャンパス内で商品をさばけ(資金は大学側が支給)、というユニークなものでした。

キャンパス内で商品を売ってみる

そんなわけで、セミナーのメンバーと協力して、商品をキャンパス内で売りさばくビジネスを開始しました。我々が選んだのは、ドイツの地ビールです。夏だったこともあり、ビール好きのドイツ人にとって、ビールは良いだろう、という物凄い雑な理論に基づいてセールスを開始しました。キャンパス内に大学の許可をもらい、出店を出店します。

キャンパス内を歩くドイツ人生徒へのマーケティングはシンプルです。単刀直入、「ヘイ、ビール売ってるんだけど興味ある?」以上です。まさにドイツらしい、変に婉曲な表現を使わない、直接的なマーケティングです。買う人は買いますし、買わない人は買いません。非常に効率的です。

ところが、他の国の生徒となると、勝手が違います。例えばアジア系の学生は、この直接的なアプローチでは首をたてに振りません。なので、私はドイツ人へとアジア人へのアプローチ方法を変えてみました。

アジア人へは「どこから来たの」「なんの勉強してるの」「僕も少し中国語話せるよ!」「三国志大好きだよ!」と、信頼関係を築くことから始めます。そうすると、先ほどの直接的なアプローチよりも、効果が如実に現れました。

冒頭で説明した通り、日本と似たような文化圏の人々にとって、商品自体よりも、それを売っている人の信用、関係性などが重要なようで、5分くらい立ち話をして、最後に「今、プロジェクトでビールを売っているんだけど」という話法で、面白いように売れました。ドイツ人からみたらこのアプローチ方法は奇異に映ったようで、ナンパみたいだね、と言われました。

ドイツの大学院では、このように、理論だけでなく、それを現実のビジネスに応用させた講義・セミナーを選択することが可能です。この部分に関して言えば、私は日本よりもドイツの大学院のほうが面白いと思いました。