今回は私の専攻の中でも特に重要な、経営系の講義の中身をまとめていきたいと思います。
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経営学と大学の講義
ドイツの経営学の講義を受けていて面白いと感じたのは、割と包括的(übergreifend)な知識が身につくところです。例えば、経営や経営コンサルの考えにも多々あり、会計的な切り口、人材的な切り口、そして企業の商品戦略的な切り口まで存在しています。
特にドイツの社会では『社会的責任』が重視されており、日本のように社員を駆り立てて地元のボランティアに参加させる、といったような持続可能性とはほど遠いようなものではなく、しっかりとした持続性の理念に基づいたもので、そのため、フェアトレードやエコ商品が顧客の嗜好として好まれます。そういった顧客のニーズを反映してか、そうしたエコ関連、社会的責任関係の経営の切り口も多いです。
さて、経営コンサル的な考えですと、外側から素人がちょっかいを出すようなイメージですが、ちゃんと数理的な理念に基づいており、顧客を納得させるうえでのいくつもの数学的手法も学んでいます。例えば、どこに新しい工場を設置したらよいか、将来的にこの商品の伸びはどのくらいになるのか、など、これらも数学的な手法を使うことで、合理的に計算可能です。
私は日本の大学院にいったこともなければ、アメリカのMBAを受けたこともないので、他のところがどんなことをしているのか比較のしようがありませんが、以下、一応私が受講している講義の中身を少し紹介していきたいと思います。
1. 将来的な数字を算出する
例えば、以下の『Gompertz-Kurve』というものを勉強しました。
Die Gompertz-Funktion ist eine asymmetrische Sättigungsfunktion. Sie ist nach ihrem Entdecker benannt, dem britischen Mathematiker Benjamin Gompertz
(ドイツ版wikipediaより引用)
『Gompertz-Funktionとは、アシンメトリーな飽和関数のことである。発見者であるイギリスの数学者にちなんでこの名前がつけられた。』
こういう数式やら定理やらは日本の大学で講義を受けていたときはアレルギーモノでしたが、ドイツではドイツ語だらけの本を読まされるより感覚的に理解できますので、よっぽどましだということに気が付きました。
要するに、将来の企業の成長を図るものですが、企業の成長は大概、直線的ではなく弧を描くように成長します。というのも、最初のうちは成果が出なかったり、顧客ネットワークが確立されていなかったりするからです。というわけで、こうした不確定要素も考慮しながら、直線的でない予想を行おう!というコンセプトの名のもとに生まれたのがこのPearl-Kurveです。ちなみに、どういう原理でこういう数式が生まれたのかは私も知りません。数学の得意な人に聞いてみましょう。
例題:販売額が以下のような会社を考える。2011年の売り上げはいくらになるでしょう。なお、売り上げの上限は12000とする。
額 V: 1000, 1500, 2850, 4900, 7400, 8200
こんな感じの問題が試験では出されます。Lnとかeとか使ってこれを解いていくのですが、Wordpressで数式を書く方法を知らないので途中式は省略します。似たようなコンセプトでPearl-Kurveというものもありますが、最大値の影響を受けやすいのがPearlで、そうでないのがGompertzのほうです。
2.交通手段を勘案する
日本は島国ですので、海外に輸出したい場合には必ず船か飛行機を使う必要がありますが、ドイツのように海も川も陸もある国は、鉄道、トラック、飛行機、船(川・海)、パイプラインなどあらゆるBeförderungsmittel(交通手段)を利用することが可能です。
最も、それぞれの交通機関に利点・欠点が存在し、それぞれの会社やプロジェクトが、どの交通機関を採用するのかは、運ぶものやプロジェクトの規模、そして運ぶ地点の遠さなどに左右されます。
飛行機は早い、車は渋滞がある、など、身近なところではこの辺が思い浮かびますが、他にも、例えば、パイプラインなどは一回使ってしまえば天候にも渋滞にも左右されずに済みますが、代わりに送れるものが限られています(液体状のモノ)。コンテナは一度に送れる量は多いですが、時間がかかりますし、停泊中のタイムロスが大きすぎて、経済的にはあまり良くありません。などなど、です。
また、2つ以上の交通機関を利用する(途中まで川を使って、途中からトラックに移し替える)パターンもありますが、これは500km未満の距離で行うと、逆に人件費などで利益を損なう可能性の方が高いので気を付けるように、と私の教授が言っていました。
3.会社や工場の配置を考える
これも割と数学的な手法を利用します。私らが講義で用いたのは『Tripel-Algorithmus』という手法で、これを用いることによって、あらゆる候補地のうちで、一番理想的なスタート地を見極めることが可能になります。
Der Algorithmus von Floyd und Warshall (auch Floyd-Warshall-Algorithmus oder Tripel-Algorithmus), benannt nach Robert Floyd und Stephen Warshall, ist ein Algorithmus der Graphentheorie. In Floyds Version findet er die kürzesten Pfade zwischen allen Paaren von Knoten eines Graphen und berechnet deren Länge (APSP, all-pairs shortest path)
(ドイツ版wikipediaより引用)
『FloydとWarschallのアルゴリズム(別名トリプル‐アルゴリズム)とは、彼らの名にちなんで名づけられた、グラフ理論のアルゴリズムである。Floydsのバージョンでは、グラフ上での全ての点から最短の道筋を探し当てることと、その長さを測定することが可能である。』
このやり方もやり方さえ覚えてしまえばそこまで難しくないので、試験では割と余裕でした。問題は、こまごまと数字を書き込んでいく必要があるため、途中で計算ミスをしやすいという落とし穴があります。
ドイツで経営・経済の勉強をすることは得策か
アメリカやイギリスのMBAは経営学で割と有名ですが、果たしてドイツの大学院で経営や経済の勉強をすることは得策なのでしょうか?個人的に、多分実践的な意味ではアメリカのMBAスクールとかの方が効果は上だと思います。というのも、ドイツの大学院は大学の延長線上にあるもので、学生もほとんどが社会経験がない者ばかりだからです。ドイツでは、大卒者と、大学院卒者では、将来のキャリアや給料に差が出てきますので、割とみな文系でも大学院に行きます。そしてノリも若いです。
というわけで、授業はおのずと、理論的・哲学的な部分に偏ってきます(それでも、私の日本の大学の講義よりは実践的だと思いますが)。特にアメリカのMBA経験者の話を聞くと、なにやらものすごい量の本を読まされたり、たくさんディスカッションさせられたりするようですが、そういったこともありません。
とどのつまり、ドイツの大学院で経営学を勉強することのメリットと言えば、とりあえずドイツの大卒扱いになるので、ドイツ語圏で就職する際に若干有利に働くかな、程度です。ただ、周りを見ているとドイツの大学出ていなくてもドイツで働いている優秀な外国人はたくさんいますし、はたして2年かけていくほどの価値があるのかは私にはまだ判断できません。