MBAの人的資源管理から学ぶその4:グローバルリーダーを科学する

グローバル化の流れの中で、海外の企業と折衝する機会、外国人混合のチームをまとめる機会、なども少なくなくなってきました。

今回は、そんな中で求められてくる「グローバルリーダー」についてまとめていきたいと思います。

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グローバルリーダーを科学する

突然ですが、マネーボールという映画を知っていますか?ブラッドピット主演の映画で、メジャーリーグの実話をもとに作られた話です。今まで弱小球団だったアスレチックスが、セイバーメトリクスという科学的手法を用いて「真にチームに必要な人材とは何か」を科学的に求めていくのがこの映画のポイントです。

人間の直感などを無視して「統計的・数理的」に選手のパワーを推し量るやり方なのですが、当然そうすると反対意見が出てきます。すなわち「プロのスカウトにしか見えない、オーラのようなものがある」という意見です。

麻雀で流れが見えるとか、プロのスカウトはその人間の資質を見抜くとか、確かに言わんとすることは分かります。ただ、それよりもこの映画の中で主人公は「数理的」に選手の力量を推し量っていき、オーラとか、ベテランの直感、という不確定要素をなるたけ排除していきます。

さて、長くなりましたが、何が言いたいのかというと、会社における人事のやり方も同じことが言えるということです。もちろん、かたや「直感」に頼る部分もあるかと思いますし、それがまるっきりオカルトだとは私は言いませんが、学問の世界では基本的には理路整然としたアプローチ、数理的なアプローチなどが好まれますので、今回のように人間の資質を論じるようなトピックになると、多少冷淡さを感じるかもしれません。

グローバルリーダーの資質とは

さて、そのドイツ式の「理路整然とした」やり方でグローバルリーダーに適した資質、というものをリストアップすると、以下のようなことが帰納的に読み取れるそうです。あ、授業での話ですので特段出典はありません。

まずは、海外の文化や違いを受け入れるような「現地民への感受性」、見知らぬ海外へ赴きチームを束ねるための「冒険心」、どんな困難にも屈しない「忍耐力」、海外で起こりがちな不測の事態に対応できる「不測の事態に対する柔軟性、問題解決能力」、その一方で、自らの行動によって何が生じるのかを前もって考える「思慮深さ」、つねに自分を客観視するための「俯瞰力」などです。

正直、ここに羅列したような資質というのは、国内のリーダーにとっても備えている必要のある資質と言えそうです。ただ、海外でプロジェクトなどを担当する場合、より一層不測の事態への対応や、現地民への配慮が必要となってくるわけで、それらが「グローバルリーダー」に必要とされてくる資質と呼ばれているわけです。

例えば、ドイツ人のマネージャーがインドに赴任したときの例を考えましょう。インドの人々の気質は陽気で、会社というよりも家族のようなとらえ方をします。一方で、インドに行ったことのある人はお分かりかと思いますが、道を尋ねると彼らは平気でうそをつきます。これはlip serviceのたぐいで、駅までの時間を30分かかると言うと目の前の人ががっかりすると思うから、わざと10分だと、尺を縮めて教えるようにしている、ということです。

一事が万事、インドではこういう形ですと、いったい何を信じていいのか分かりません。中にはおせっかいで「お宅の従業員が経費をちょろまかしている」と告げ口があったとしても、確かにそういうこともありえるだろうし、もしかするとそのチクった男が嘘をついているのではないか、と疑心暗鬼に駆られることもあるわけです。

そういう場合にまず必要なのが、上述の通り「現地への感受性」、現地の人々の文化を重んじたうえで行動することです。例えば、仮に真偽の怪しい告げ口があった場合、それを嘘と決めつけてしまうと「相手の顔に泥を塗る」ことになります。これは、わたし達日本人のように「メンツ」を重要視するアジア人にとっては至極当たり前のように思えますが、ドイツ人からしてみたらこうした文化の違いも重要になってきます。相手の顔をつぶさないように、そこでの答えとしては告げ口に対しお礼を述べたうえで、ことの真偽を確かめるべく社内で動きましょう、というのが正解のようです。

海外経験とグローバルリーダー

若いころに留学など海外経験がある人は、多かれ少なかれ、その経験が将来生かせることでしょう。ただ、肝心なのは、いつもいつもそのやり方が通用する、とは限らないことを理解しておくことです。いわんや体験の「Copy & Paste」は時には通用しないということです。

ドイツでうまくいったやり方がブラジルで通用するとは限りませんし、10年前に通用したやり方が今年通用するとも限りません。世界の情勢は絶えず動いているので、過去の成功にとらわれることなく、後輩の意見であれ現地の人の意見であれ、新しい意見をどんどん取り入れ、絶えず勉強を続けていくことこそが、グローバルリーダーにとって最も重要なことである、とうちの大学院の教授は言っていました。