ドイツ語の過去の時制は英語と似ている:過去形と現在完了の違い

うろ覚えですいません、時制の考え方はその民族の哲学を表すというのを、学生のとき、何か民俗学か何かの本で読みました。

例えば、ポリネシアのある小さな島には『明日』と『昨日』の時制が同じような民族があります。

ハンモックに揺られて、その日食べるものをその日に狩猟する彼らにとって『今』でないものは『それ以外』という時制なのです。

というわけで、今回は、主に『過去系』をメインに、『時制』についてまとめていきたいと思います。未来形に関しては最後に少しふれますが、ドイツ語には未来系というよりは、願望や推測を意味する助動詞などが存在し、どういったときに使うかというのは慣れが必要ですので深くは掘り下げません。

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過去系とは

広辞苑による定義は以下の通りです。

文法で、時制の範疇の一。今より前にあった事柄を述べるもの。

定義としては簡単です。『昨日焼き鳥を食べた』『12月3日に鈴木君が生まれた』『794年に平安京ができた』など、口語文だろうが文語文だろうが、40億年前におこったことだろうが、今より以前におこった事柄に関してはすべて過去系です。

では、また英語を例に見ていきましょう。

英語における過去系

英語には様々な過去をあらわす表現があります。具体的には、過去系、過去進行形、現在完了形、過去完了形などです。

過去進行形については問題ないと思います。I was playing baseball then(私はそのとき野球をしていた)であれば、ある特定の過去の時点で、ある特定のことを継続していたという意味です。

過去完了はドイツ語のB1~B2レベルの話になってくるので、ちょっと置いておきます。ただ、文法の基本さえ身に着けておけばそんなに難しくありません。

問題は、過去系と現在完了形の違いです。一般には、過去系と現在完了の違いは『点』と『線』の違いだと言われています。

過去系においては、ある一点においてなにかを完了したことを示します。
例1:He went to USA last year.(私は去年アメリカに行った)

これで終わりです。他の情報は何もありません。彼は今も京都にいるのかどうかは分かりません。

現在完了は、現在もその状況を引きずっているような過去系です。
例2:He has been to USA.(彼はアメリカに行ったことがある)

彼がアメリカに行った、という事実は、行き終えた後も続いています。行ってしまって終わりではありません。今も、彼がアメリカに行ったという事実は消えないのです。

ドイツ語における過去系

さて、英語のはなしではないので、ドイツ語の話に戻りましょう。あくまで比較のために英語の話題を取りあげました。

以下、英語との対比でみていきましょう。

まず、過去進行形にあたるドイツ語の表現ですが、これはありません。~していたときという意味の『während』などと過去系を組み合わせて、『そのとき何々していた』という文章を作ります。

さて、ドイツ語の過去系と現在完了形の区別ですが、これが英語とは違うので注意してください。

英語は、
過去系=単なる過去
現在完了形=現在も継続しているような過去

という区別でしたが、
ドイツ語では、
過去系=やや固い書き言葉
現在完了形=話し言葉、フランクな書き言葉

として使われます。

ただ、根本的な考え方は英語と同じです。Have+過去分詞の形をとる『現在完了』では、過去の何か出来事は我々に影響を与えているものですが、ドイツ語では自分の身におきた過去の出来事は、基本すべて『自分の現在に生き生きと影響を与えている』と憶えてください。

なので、口語文に関してはほとんど現在完了形の『habe+過去分詞』(habeがseinに変化する形も出てきますが、これは後述します)の形をとります。

ただし、新聞などの文語文に関しては、自分の現在と切り離された『過去の点』と考えてよいので(履歴書などのオフィシャルな文を書くときも『過去系』を使いますが)、過去系を使います。

現在完了:Gestern habe ich in der Kneip getrunken.(昨日飲み屋で飲んだよ)
過去系 :Gestern trank ich in die Kneip.(昨日飲み屋で飲んだ)
意味は同じですが、下の口語を用いているネイティブを私はほとんどみかけません。基本的には、話し言葉はhabe+過去分詞の形でつかいましょう。

規則変化、不規則変化

基本的には、過去形であれば語尾に+te、過去分詞系であれば語頭にge、語尾にtをつけます。

しかし、英語で不規則変化を憶えたように、ドイツ語でもたくさんの不規則変化がでてきます。以下、例をあげますが、左から、現在形、過去系、過去分詞系です。
sterben starb gestorben (死ぬ)
schlafen schlief geschlafen (眠る)

規則変化のことをregelmäßig、不規則変化のことをunregelmäßigといいますが、どの動詞が規則変化をし、どの動詞が不規則変化をするのかは、正直憶えるよりほかに判別手立てはありません。

英語のgo・went・goneみたいに、リズムをつけて読みながら憶えるのが良いでしょう。

あとは、学習法のページにも書きましたが、教師やラジオ番組が何か動詞を話すたびに一緒に口を動かしてみる『復唱』も効果的です。

語学教師が、流暢な発音である言葉を発したとします。あなたはそれを、声に出しても出さなくてもよいので、口の中で唱えてみてください。

ドイツ語の未来系

誰にも未来のことなど分からないので、未来を表すには、werdenという助動詞を用いて意志を表す表現や、推量をあらわす表現を用います。
推量:Morgen wird es regnen.(明日は雨が降るだろう)
意志:Ich werde ihn morgen besuchen.(私は明日彼を訪ねます)

ただ、ドイツ語の場合werdenや同じく意志を表すwollenを用いると、願望的なニュアンスが強くなりますので、日常会話で普通に『今日は飲み屋に行くわ』と言う場合には現在形を用いてIch gehe in die Kneip.でも普通に問題ありません。

werdenやwollenの用法に関しては少し複雑なので後述します。

これで時制の説明は終わりです。また成句や文章の作り方とともに、時制についてはまとめていきますので今回は簡単な概念を説明するたけにとどめておきます。