MBAの人的資源管理から学ぶその2:我々は海外生活で何を学ぶことができるのか

前回に引き続き、今回も海外滞在のことについて文献を交えながらまとめていきたいと思います。特に、これから海外に出かけられる人には読んでいただければ、海外での過ごし方が有意義になられるかと思います。なお、前回と同様に、参考文献はEvolving and enduring challenges in global mobility(Paula Caligiuri, Jaime Bonache)です。

海外生活で得られるもの

就職活動で「海外生活」はもはや鉄板ネタになっていますが、それはなぜでしょうか。やはり、海外経験を通じて得られるものは少なくなく、それが少なからず将来の成功を占う試金石になりえるからです。

It is good to know something of the customs of various peoples, so as to judge our own more soundly and so as not to think that everything that is contrary to our ways is ridiculous and against reason…. But when one takes too much time traveling, one eventually becomes a stranger in one’s own culture.
Rene´ Descartes, The Discourse on the Method

「異なる人々の習慣を知ることは、自分自身の習慣をしっかりと見極めるためにも、自分以外の習慣がばかげたものであると思わないためにも必要だ…ただし、あまりに多く旅をするものは、最後には根無し草になるだろう。デカルト」

これはデカルトの言葉ですが、要するに自分と異なった文化や価値観の者に触れるのは重要だ、と言っています。実際、ビジネス上でも海外経験は国際リーダーを育てるためのキャリアの一環として以下のように認識されています。

International assignments have been labeled as the ‘‘most powerful experience in shaping the perspective and capabilities of effective global leaders’’

国際的な仕事経験は「国際的なリーダーを育てる上での価値観とスキルを磨くためのもっとも強い経験」であるとされている

これは、なにもビジネスの場だけではありません。海外での経験は確かに人を成長させる側面を持っていると、学問的にも証明されています。例えば、研究によると、160以上も身につくスキルを、以下の3つのスキルにカテゴライズすることができるとのことです。すなわち、1)自分の感情のコントロールや他人への寛容さを磨く「Self-Management」、2)異なった文化や価値観を許容し、理解することの「Relationship-Management」、3)斬新で多様なアイデアを発見し、国籍を超えた知識を伝える「Business-Management」です。

見てみればわかる通り、こうしたスキルはなにも国際的な環境に身を置いていなくても重要なものです。職場で部下の意見に耳を傾けるか、斬新なアイデアを生み出せるかは、たとえ国内で働いていたとしても求められるスキルです。

学問的な言い方をすると

Experience abroad shape the cognitive schema, not only in the single country context

「海外経験は、一国の内部だけでは行えない、認知スキーマを発展させる」

とのことです。

さて、こうしたスキルはどのように身に着くのでしょうか?漫然と海外で生活だけして、部屋でゲームばっかりしていてもこうしたスキルは身に付きません。以下、具体的な海外での身の振り方についてまとめます。

Social leaning theory(社会学習理論)とContact hypothesis(接触仮説)

これらは海外でのどのような振る舞いが人格形成やスキルアップによい影響を与えるのか、ということについて説明する理論です。

まず、Social Leaning Theoryについてみてみましょう。これは心理学分野から提唱された理論です。

Development occurs when expatriates are able to practice newly learned behaviors in the host country, when they receive feedback on their behaviors, and when the environment is professionally or emotionally safe to take risks and possibly make a mistake

「海外生活での成長は、駐在者が新しい行動にチャレンジできるとき、そしてその彼らの行動に対してフィードバックを誰かから与えられるとき、さらにその環境が職業的、感情的にたとえ失敗するリスクをとっても安全である保障があるとき、などに促される」

若いころの失敗は買ってでもしろ、と言いますが、まさしく失敗を通して成功できる好例といえます。海外で最初から最後までパーフェクトに振る舞える人間なんていません。真摯に海外生活と向き合っている限り、誰でも一度や二度、恥ずかしい思いをするはずです。

と、いうわけで、失敗してもいい環境に身を置いて、そこから学ぶこと、つまり「社会的学習」が肝要、というのがここでは述べられています。

続いて、Contact hypothesisのほうはどうでしょうか。

The more peer-level interaction expatriates have with others from cultural group, the more positive their attitudes will be toward the people from that cultural group

「対等の地位関係の他のカルチャーグループとの相互コンタクトが増えれば増えるほど、他のカルチャーグループへの態度がだんだん好ましいものになっていく。」

こっちの仮説のほうはもっとシンプルで、とにかく異なった文化的側面を持つ者への接触を積極的に行いましょう、というものです。これによって、相手への差別や偏見が解消されることでしょう、という社会心理学的な用語です。

要約すれば、まあなんとなく察しはつくと思いますが、海外にきたのであれば失敗を恐れずその国の文化に溶け込むべくいろいろと行動し(できればフィードバックをもらい)、かつ異文化の人々との交流機会を増やしましょう、ということです。

結局海外生活は誰に向いているのか

というわけで、前回から続いた海外生活への一考察はひとまずここで終了します。結局、わたしもどんな人がドイツに溶け込めるのか、どんな人が溶け込めないのかは、判断がつきません。もちろん前回の記事のように遺伝的な要因がある程度性格に影響を及ぼしており、それがポジティブな、あるいはネガティブな影響を与えることは否めません。一方で、海外生活を通して後天的な性格が変わる点があることも、今回の記事のようにまた事実です。

ただ、海外に適合できなかったからといって、それは人間として劣っているわけでは全くありません。私は留学をする人が特段偉いとは思いませんし、海外で就学や就職しているからといって優れているとのたまうつもりもありません、国内でも活躍している人は活躍しています。

ただ、私の気質上、新しい文化に絶えず触れて、新しい人々と絶えず接触して刺激的な生活を送りたい、という子供っぽい面がありますので、その欲望を充足するために、遠い国での海外生活がたまたま適していた、というだけです。おそらく、最終的に日本を離れて海外に暮らす人の多くが、仕事・学問上の義務などよりも、そういった気質・性格的な側面に促された部分があるのではないでしょうか。

というわけで、海外生活に適する人の個人的な見解としては「本人の気質による」です。とりあえず、来てみないことにはわかりません。

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