心理学的な話になりますが、人間が新しい国に赴くとき、最初の2~3週間はいわゆる「興奮した」状態にあると言われています。つまり、目にするもの、耳にするものすべてが新鮮で、退屈を感じません。それゆえ、海外旅行などをすると、海外の良い部分だけを鮮明に覚えているのです。
ところが、1ヵ月を過ぎ、語学学校での代わり映えのない生活を続けていると、次第に飽きてきます。結局、物事を新奇に感じられる期間を過ぎてしまえば、日本だろうとドイツだろうと、同じように退屈になってくるのです。
私がA1のレベルをクリアし、A2の授業が始まった時は、ちょうどそんな感じの倦怠期に陥っていました。
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A2の授業が開始する
前の記事でも述べましたが、A1の授業は学問的には役立つのですが、クラスメイトの年齢や目的が違いすぎて、一緒に遊ぶとなるとあまり面白くないのです(社会人経験をしたものからしたら)。
そのため、基本的にジョギングと学校での勉強の繰り返しで、生活にも飽き飽きしていましたころです。ここいらで、生活にメリハリをつけるため、語学学校の主催するイベントに積極的に参加するようになりました。
例えば、私の在学していた語学学校では、サッカーやボーリング、居酒屋ナイトのようなイベントを多く開催してくれていました。これは、クラスの垣根なくおこなわれるイベントですので、別のクラスの友達ができるようになります。
ここで、トルコ人の友達が多くできました。ドイツには数多くのトルコ移民がいて(難民ではなく、移民です)、彼らも、大学入学目的でドイツ語を勉強していました。
のちに、大学に入るころになるとヨーロッパ系の友達もできるのですが、このころ、もっぱら私の仲のいい友達はアラブ人、あるいは中国や韓国などのアジア系です。
これは、ドイツの大学で心理学的な講義を受けて知ったのですが、人間は、第一印象で、自分と似た年齢、容姿、国籍の人と仲良くなりたいと、無意識のうちに感じるようです。それゆえ、このころの私は、おそらく無意識にそういった層の友人を選んでいたのでしょう。
さて、授業後の生活に張りができたところで、勉強のほうも次第にコツを覚えていきました。とにかく、必要なのは「語彙」です。語彙さえわかれば、多少文章の意味が分からなくても「大意」の検討がつきます。私の勉強方法はこんな感じで、とりあえず「大雑把な」意味を捉えることに集中し、完璧は目指しませんでした。
なので、冠詞なども、この当時はおざなりにして、とにかく意味を覚えまくりました。冠詞に関しては、あとからどうとでもなります。とにかく、このレベルで必要なのは、多少へたくそで、完璧でなくても「ドイツ語で会話できる」ようになることです。
ドイツ語で会話ができるようになれば、友人とのコミュニケーションもドイツ語で行えますので、一気にできることの幅が広がります。これが、私のA2レベルのころのモチベーションでした。
実際に、簡単なコミュニケーションをするにあたって必要なドイツ語は、A2~B1レベルまでにある程度収められています。B2~C1で習うような「高度」なドイツ語は、あるにこしたことはありませんが、単にコミュニケーションを目的とするのであれば、B1レベルでもなんとかなります。
A2~B1へ
A2の試験をパスしてB1へ移行するまでには、およそ1ヵ月くらいかかりました。この時期が、ドイツ語を勉強するにあたって一番「基礎的」な部分を学んだ時期だと思います。この基礎の部分をおろそかにしていたら、多分その後の伸びは無かったかもしれません。
上述の通り、B1レベルに達するとできることが増えてきます。つまり、「単語」ではなく「文章」を作る能力が身に着くので、日記を書いたり、ドイツ人と初歩的なコミュニケーションをとることができるのです。
私は、語学学校の補講を利用し、この時期から自分の書いた文章を添削してもらうようにしていました。同時に、街中でも積極的にドイツ語を使うことに挑戦します。床屋へ行って髪を梳いてもらう、図書館で会員証を発行してもらう、などなどです。
頭の中にいくつか言いたいフレーズを用意しておいて、その通りに口に出すなのですが、やはり、語学学校で話すのと、講師でないドイツ人を前にしてドイツ語を話すのとでは、雲泥の違いがあります。こうした「新しい経験」とともに覚えたドイツ語の単語は、中々忘れない、ということを知りました。
ホームステイ先でも次第にできることが増えていきました。キッチンを使わせてもらって料理を作ったり、一緒にステイ先の家族とともに食事をしたり、といった形です。もともと、彼らは賃貸収入を得る目的+異国のコミュニケーションを楽しむ目的があるので、コミュニケーションの相手としては比較的容易です。
こうして、語学学校で文法的、学問的なドイツ語を勉強し、外で実践的なドイツ語を勉強する、という生活を続け、ドイツ語のレベルが次第に高まっていくのを実感しました。