私のドイツ留学6:大学院応募のための書類手続きと入学許可証の獲得!

ドイツの大学院に応募できる資格を得たとは言え、まだ入学許可を得たわけではありません。つまり、私はその時、仕事も大学の籍もない、ただの「無職」の状況でした。大卒で証券会社に入り、休む間もなく働いてきた自分にとって、なんの肩書もなく平日の町をふらふらする、というのは、なんとなく精神にくるものがありました。

この、ドイツから一度日本に戻り、書類をそろえ、入学許可を待つ期間が、ある意味、精神的に一番きつい時期だったかも知れません。地元の友人たちはみんな働いています。そんな中、自分にできることと言えば、ただ応募した大学からの入学許可をただポストの前で「待つ」だけの生活です。

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大学受験に必要な書類たち

私が帰国した時点で、多くの大学での次の学期への応募期間が残り2週間程度に迫っていました。一刻の猶予も許されません。パソコンで黙々と応募書類の確認をし、そろえていく作業をおこないます。

一般的なものでは、大学の卒業証明(英)、成績証明(英)、などで、これらは母校で簡単に手に入るのですが、中には手に入りづらいものもあります。私が苦労したのは、「高校の成績証明書(英)」「就労証明書(英)」「大学で履修した科目のシラバス(英)」などです。というのも、これらは英語ではなく「日本語」で用意されており、いちいち英語に訳などしてくれないからです。

高校の成績証明書(英)の発行に関しては、学校長の許可がいる、とのことで、慌てて母校に向かいました。学校長は翌日から出張にでかけるとのことで、一日遅かったらアウトでした。就労証明書は、日本語で書かれたものを国の認可を得た翻訳会社に依頼し、2万円ほどかけてドイツ語訳してもらいました。今思えば、わざわざドイツ語に訳さずとも、英語の翻訳会社を探せばもっと安かった気がします。

この中で一番やばかったのはシラバス(英)で、私の学部は国際学科でもなんでもない、ただの商学部です。そのため、シラバスは日本語で用意されています。どうしたかというと、自分で全部日本語→英語に、膨大な量の履修科目を翻訳しまし、最後に「私は正確に訳したことを誓います」と署名しました。さすがに、この量のシラバスを翻訳会社に依頼していたら十万円近くかかりますし、手作業でなんとかしました(これで大学側が認めてくれるかどうかは知りませんが、最終的に複数校から入学許可を得たので、多分努力は認めてくれたはずです)。

このシラバスの翻訳のために、締め切り前の3日くらいは漫画喫茶で徹夜し、コーヒーを片手に黙々と翻訳作業を続けました。

もう一つ、面倒な作業として、「認証コピー」という作業があります。大学の卒業証明などは、普通にプリンターでコピーしたものは受け付けてもらえません。認証コピーという、しかるべき機関でちゃんとコピーしましたよ、という証拠のスタンプが必要なのです。

どうしたかというと、広尾にあるドイツ大使館に行き、認証コピーを貰います。お昼にいくと2時間くらい待たされるので、早起きし、大使館が開く前から並び、朝一で受付を処理してもらいました。

このように、ぎりぎりの期間の中ですべての書類手続きを終え、片っ端から自分の行きたい大学に書類を発送しました。行きたい大学の選定は、以前触れたように、私の気のいいタンデムパートナーに手伝ってもらいました。同時に、志望動機(ドイツ語)や履歴書(ドイツ語)の作成なども、彼に手伝ってもらいました。

おそらく、これ以上「無職」期間を続けることへの不安感が、自分をこの過酷な事務処理手続きへ駆り立てたのだと思います。

入学許可が下りる

私が思う、新しい語学を勉強するにあたっての難しい点は「くだけすぎた表現」と「オフィシャルすぎる表現」です。前者は、ドイツ人の学生とバーなどにいくとわかりますが、文法はめちゃくちゃですし、スラングは飛び交いますし、なにを言っているのかわかりません。

後者は、逆にかたいドイツ語で、丁寧で婉曲な表現を使いすぎていて、結局何がいいたいのか分からない文章です。

さて、ドイツの大学からの書類は、基本的にオフィシャルなものですので、上述のパターンで言えば後者のタイプに該当します。書類の中で、「合格」「不合格」と明確に記載されているわけではないので、手紙(メール)をあけて、文章を読み終わるまで合不合が分からなく、ドキドキするのです。

最初に私の受け取った結果は国際郵便で届きました。「この度、応募いただきありがとう~」云々と続いた後に、最終的に「入学許可できない」的な婉曲表現で、がっかりした覚えがあります。ただ、結果が郵便で届くと分かったので、それから毎朝ポストを確認するのが日課になりました。

郵便の宛名は漢字ではなくアルファベット綴りですので、万が一にも郵便局員が私の名前を見逃さないように、自宅のポストにも英字での名前を急ごしらえで作って張っておきました。

そんなこんなで、結果は郵便でくるとばかり思っていたので、メールで大学から通知がきたとき、私は何の件だか想像できませんでした。言わんとする内容は、「この度、この手紙をあなたに届けられることを我々は幸福に思う、あなたの入学を許可します」的なものでした。つまり、大学院に合格したのです。会社を辞め、1年が経過しようとしていました。