私は以前、過酷と言われる日本の職場で働いていました。まあ、それなりにやりがいもありましたし、もうちょっと続けるつもりだったのですが、なぜか知らずに辞めてドイツに来てしまいました(前の職場の人、すいません)。
ドイツに来て後、大学院に入り、現在はドイツの会社で働いています。業種が変わったので一概に比較することはできませんが、それでも、ある程度の比較検討はできるのではないでしょうか。
今回は、日本とドイツの職場を比較し、どちらが「良い職場」なのかを見ていきたいと思います。
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ドイツと日本の職場環境を比較する
日本では、よく北欧型の仕事環境が理想的とされています。確かに、ドイツをはじめとする北欧の人々は長々と仕事せずに、さっさと終わらせて5時には家に帰ります。では、すべての面でドイツ型の仕事環境が優っているのでしょうか?
今回は、両国で働いた経験から、以下の5つのポイントに着目し、優劣をつけてみることにしました。
1.一日の仕事時間
私が日本で働いていた時は、毎日12時間以上は働いていましたが、ドイツでは8時~9時に出社、17時には帰社できるので、実際の労働時間は8時間程度(ランチタイム除く)です。私のボスはもっと働いていますが、基本的に早く帰れますし、休日出勤もそんなにたくさんありません。
コンサルとか銀行とかで働いている私のドイツ人の友人はもうちょっと遅くまで働いていますが、それでも12時間働くことはあまりないようです。というわけで、一日の労働時間を比較すると、ドイツの会社に分があります。
ドイツ〇―日本×
2.有給消化
すでにお分かりかと思いますが、ドイツでは年間30日程度有給がもらえて、それを消化するのに誰もまったく何も言いません。繁忙期だろうがなんだろうが、みんなお構いなしに有休を消費します。
かたや、日本で有休をコンスタントに消費できるほど勇気がある人間はなかなかいないでしょう。しいて言うなら、夏休み5日を使える程度でしょうか。ただ、日本側の救いとして、年間の国民の休日の数だけは日本が勝っています。
でもやはり、年間30日の有給消化は魅力的ですので、この面でもドイツの勝ち。
ドイツ〇―日本×
3.給料
なんかこのままですと、日本人みんなドイツに移住してドイツで働いたほうが幸せになれそうな展開ですね。給料はどうでしょうか、もちろん職種に寄りますが、ドイツのほうが基本的に給料はいいです。
ただ、ドイツの場合、税金ががっつり差っ引かれますので、手取りベースですと意外と手元に残りません。独身の私の場合、日本で働いていた時と給与額は似たようなものなのですが、手取りで比較すると減りました。
まあ、私の場合日本の大企業からドイツの中小企業へのジョブチェンジですので、一概に比較はできませんが。
また、日本の会社の場合基本的には年功序列的に徐々に給料は上がっていきますが、ドイツの場合、実力主義的に決まりますので、給料が上がるか下がるかには個人差があります。ですので、給料に関しては引き分けにしておきましょう。
ドイツ△―日本△
4.福利厚生
福利厚生を見てみましょう。これに関しては、日本が勝っています。基本的に、住宅補助などはドイツには存在しません。日系企業で働いたことのあるドイツ人に聞いたことがありますが、彼も、日系企業のメリットとして、福利厚生が良いことを挙げていました。
福利厚生以外にも、基本ドイツの企業は社員任せです。私は会社が始まるとき、まったくマンションが見つからず、危うくホテル暮らしで会社生活をスタートする羽目になりそうでした。
他にも、会社からのアドバイス、補助、社割という面では日本のほうが勝っています。
ドイツ×-日本〇
5.Job security(雇用保障)
日本ではみずほが人員削減案を発表したようですが、それでも欧米的なドラスティックな首切りとはまだまだ一線を画していると思います。私のドイツの上司の口癖は「有給使ってもいいし、早く帰ってもいいが、結果だけ残してくれ」です。逆に言えば、毎日出勤し、頑張って仕事しても、結果さえ残せなければいらない、というわけです。
この点、日本の企業には情があります(ある意味いい面でもあり、悪い面でもあるのですが)。結果が多少残せなくても、よっぽど素行不良でない限りクビにはなりません。そもそも日本の企業は長期雇用を心がけ、そのため社員にも多額のお金をかけて教育をしますので。
というわけで、多少リストラが横行しようが、やはり日系企業の雇用保障のほうが上回っていると思います。ただ、ドイツの場合、首になっても実績さえあれば年齢関係なしにすぐ次の仕事先が見つかりますが。
ドイツ×―日本〇
まとめ
さて、今回以下の5つのポイントから、日独の企業環境を比較しました。
- 労働時間(ドイツ)
- 有給消化(ドイツ)
- 給料
- 福利厚生(日本)
- 雇用保障(日本)
結果、2勝2敗1分けで、両方にメリットとデメリットがあることが分かりました。実際にこの傾向は、私の働いた会社だけでなく、経営学的にも言われていることですので、ある程度の信頼性があるデータかと思います。
まず、ドイツの会社、というか社会全体に言えることですが、非常に「合理的」「効率的」です。いらない人材は切る、いる人材は残す、仕事が終われば早く帰る、などなど。これがもろに反映されているのがドイツの教育課程で、小学校低学年の時点で、ドイツではすでに「職人組(勉強できない子)」と「大卒組(勉強できる子)」の未来が決定されています。
かたや、日本社会や会社組織は、なんだかんだいって情に厚いです。多少仕事ができなくても、頑張っている人をクビにするわけにはいかない、一生懸命頑張っていれば、やがて出世の道が開ける。そうすると、中にはあまり仕事ができるわけではないのに管理職につく人が出てくる。
私には、ドイツ、日本、どちらのやり方が「良い」やり方かと、断言することはできません。お互いにいいところもあり、悪いところもありますので、それは、自分の能力や家庭環境、人生の目標などを考慮に入れたうえで考えていくべきことかと思います。