統計から紐解くドイツの治安と犯罪にあう確率

以前、ドイツの治安に関する記事をまとめたことがありましたが、あれから私もいろいろなドイツの都市へ行ったり引っ越したりして経験が増えたので、アップデートされた情報を載せたいと思います。

時々ニュースを見ていると、海外で強盗にあった、暴行にあった、殺害された、という邦人の事件の話題が飛び込んできます。夜中に一人で女性が歩けるのは日本くらいと言われているほど日本の治安は良いのですが、ひとたびヨーロッパにくるとそうした安全意識は根本から変えていかなくてはいけません。今回はヨーロッパの中では比較的安全と言われているドイツの治安についてまとめていきます。

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ドイツの治安。そもそも治安とは何か

寄せられる質問の中でもっとも多いのが「治安」に関する質問です。「ドイツの治安はどうか」「留学を考えているけど治安はどうか」などといった質問で、やはり海外での生活を考えるときは、それが重要なファクターになってくると思います。

特に、留学する本人ではなく、親御さんからのお問い合わせが多く、やはり海外に子供が一人で滞在することに抵抗を感じる方が多いのだと実感しました。

さて、そうした不安を抱えられている方にとって少しでも役に立つ情報になればよいのですが、まず、なにをもって「治安がいい」ととらえるかは、正直言って見方によって異なります。例えば、ドイツの犯罪率は確かに日本よりも高いですが、殺人や強姦など悪質ないわゆる「重犯罪」よりもどちらかといえば「空き巣」「引ったくり」「泥酔者の喧嘩」「サーバー犯罪」など狡すっからい犯罪が多いのが特徴です。

ですので「ドイツは危険ですか?」と聞かれたとて「注意していれば殺人事件にあう確率はそんなに高くないけれど、財布とか携帯はよくパクられるし、総合的にはやや治安の悪い東京の繁華街くらいのレベルだよ」というなんとも曖昧な回答になってしまうわけです。実際に、統計的な数値をみてみましょう。

1.殺人

死んでしまったら終わりですので、誰もが一番巻き込まれたくないのが殺人かと思います。108の国と地域を対象にした国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)調べによると、日本の10万人あたりの殺人件数は0.3件の105位で、日本よりも殺人率が低い国はシンガポール、香港、リヒテンシュタインなど小国しかありません(日本の場合、たまに曖昧な遺体が自殺で片付けられてしまうこともあり、100パーセント正確かといわれると怪しいですが)。

ドイツの順位はというと、0.8件で92位です。これは日本より3倍近く悪いですが、韓国、ニュージーランド、スウェーデンなど一般的に治安のよいといわれている国よりもいい値になっており、人口の比較的大きい国の中では割と特別な存在のひとつです。

2.強姦

殺人についで巻き込まれたくないのが男の私の場合でも強姦です。殺人に比べて、その比重はどうでしょうか。割合を見てみると、日本の強姦発生率が10万人当たり2件以下なのに対して、ドイツの場合9件で、5倍近い値になっています(ただ、被害者が必ずしも届け出るとは限らないので、この場合も100パーセント正確なデータかというと怪しいが)。ちなみに2000年前後のデータでの強姦発生率トップは南アフリカの123件でした。

3.強盗

強盗もいやですね、なにせ留学生活にかかせないお金がなくなるわけですので。強盗の発生率を見てみると、まず、世界1位の強盗発生率を誇るのはアフリカでもラテンアメリカでもなく意外にもスペインで、10万人あたりの発生率(2000年の国連調査)は1200件、つまり10人に一人の割合で発生していることになります。同じくヨーロッパのドイツはどうかというと70件ですので、これは日本の4件に比べて20倍強の数字になります。
まあ、データの取り方なども国によって異なるでしょうし、そもそも古いデータなのでどこまであてにできるかは知りませんが、まとめるとドイツに関しては以下のことが言えそうです。

殺人の危険性・・日本の3倍
強姦の危険性・・日本の5倍
強盗の危険性・・日本の20倍

さて、この数字をもって「治安がいい」というのか「治安が悪い」というのかは人によるかと思います。少なくともほかの欧州各国よりはいいですが、日本よりは悪い、といったところでしょうか。日本が特殊すぎて少しぴんとこないかも知れませんが。

最終的に犯罪に合うかはあくまで確率的な問題

この上記の数字から読み取れることに加え、私が仮にドイツ渡航を考えている人に治安的な面でアドバイスをするのであれば、当たり前ですが以下のことが言えます。

「治安の悪い場所や、夜中の一人歩きなどを避ければ、犯罪にあう確率は軽減できる」

日ごろの行い次第で犯罪にあう確率を軽減することは可能ですが、こればっかりは正直なところ確率の問題ですので、運不運の要素もあります。夜中の3時にスラム街を歩いて帰っても何も起きないこともありますし、逆に昼間に人ごみを歩いていて通り魔に刺される可能性もあります。ドイツで殺人に巻き込まれる可能性を確率論だけで考えると、10万人に1人ですし、強姦を加味しても1万人に1人です。

ただ、学生ですのでやはりパーティーにも行きたいですし、たまには息抜きに夜遊びもしたいかと思います。そうした場合に毎回タクシーを使って帰るの馬鹿らしいですし、やはり長く住んでいると気が緩んでくるものです。

ですので、私から付け加えてアドバイスをするのであれば、以下のことが言えます。

1.大都市より田舎都市

この選択の差は大きいです。統計的にも、都市部での犯罪遭遇率は田舎に比べてかなり高くなっています。地方の学生都市などであれば、そこまで凶悪な犯罪はおきにくいですし、仮に治安の面で不安を抱えているのであれば、大学選考の時点で大都市ではなく地方の学生都市を留学先に選ぶことをお勧めします。

2.住居のロケーションを考える

多少高くても街中のアパートを借りれば、夜遊びして家に帰るときも暗い道を通らずにすみます。もちろん、襲われるときは襲われますし、100パーセント犯罪を予防できる方法かと問われると微妙ですが、暗い夜道を一人で30分も歩いて帰るよりはましです。

酔っ払いに絡まれたら

最後に、私の経験ですが、ドイツでは夜になると酔っ払いや変なやつがよく絡んできます。中には稀に喧嘩になることもありますが、9割方は虚勢です。この辺の判断は非常に微妙なところなので、あくまで自己責任で読んでいただきたいのですが、酔っ払いが近づいてきても、基本的には毅然としていれば割と何とかなることがほとんどです。特にドイツ人の友人いわく、ここで弱弱しい態度を見せると余計につけ込まれるので、あくまで堂々としていろ、とのことです。

あとは、なぜかドイツ人(西洋人)特有のステレオタイプとして、日本人はみんな柔道や空手ができる、というこちらにとってはありがたい勘違いをしてくれているので、体が小さいのにびびってないということは、よもやこいつはJUDOの達人かもしれない、と引いてくれたケースがあったのかも知れません。森で熊に襲われたときの対処法と同じで、死んだふりや走って逃げるのではなく、冷静に目をあわせながらゆっくりその場を立ち去る、的な。

まあ、たとえ喧嘩になってしまったとしても、人がいれば大抵は周りがすぐにとめてくれますし、曲がりなりにも法治国家ですので、大怪我したり死んだりすることはあまりない(はずです)。このあたりの判断に関しては、あくまでおのおの判断でよろしくお願いします。