日本人がドイツの大学院に留学する意味とは!?

日本における大学院進学者の数は12%程度と呼ばれています。ただし、この割合は理系と文系がミックスされているので、この中で大学院に進んだ文系者の割合、となるともっと少なくなるでしょう。

というわけで、日本ではあまりメジャーではない「文系者の大学院進学」ですが、ドイツではいったいどのような状況なのでしょうか?ドイツの大学院に進学すると、なにか良いことがあるのでしょうか。今回は、ドイツの大学院で学べること、メリットなどについてまとめていきます。

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ドイツにおける大学院の立ち位置

日本と違い、ドイツでは逆に「大学院に進学する」ほうが多数派となっています。研究によれば、7割近いドイツ人が、大学卒業後に大学院に進学、または進学予定にある、ということです。

Derzeit entscheidet sich die Mehrheit der Studenten für einen Master. Fast drei von vier (72 Prozent) Bachelorabsolventen machen ein Jahr nach Abschluss ein weiterführendes Studium – oder haben es zumindest vor, sagt Hochschulforscher Andreas Ortenburger.

「現在のところ大学院進学はドイツにおける多数派である。研究者によれば、大学を卒業した72%が、大学院進学を翌年におこなうか、少なくともその予定があると述べた」

では、いったいなぜそこまでドイツにおいて「大学院進学」がメジャーなのでしょうか。そしてなぜ日本では、文系の大学院進学がそこまでメジャーではないのでしょうか?その理由は、両国の社会構造の仕組みを見れば理解できます。

まず、日本の文系に求められているのは、スペシャリストではなく「ジェネラリスト」の立ち位置です。営業として入社し、人事もマーケティングも経験する、いわば「ジョブローテーション」を通じたキャリア形成が一般的です。これは、日本人の特性上、より「グループでの仕事」やコミュニケーションに重きを置く傾向があり、様々な課の仕事を知っておく必要があると言われているからです。

さて、ドイツではどうかというと、求められているのは何でも屋である「ジェネラリスト」ではなく「スペシャリスト」です。餅は餅屋、人事部は人事部、銀行マンは銀行マン、と、それぞれの分野における住みわけがはっきりとなされています。

大学院で勉強できること、大学院の目的とはなんでしょうか?「専門分野」の理解です。つまり、大学院過程は、そもそもスペシャリストの育成を念頭に置いたプログラムなので、日本ではメジャーではなく、ドイツではメジャーなのです。その効果は給料や昇進に如実に表れています。

“Masterabsolventen verdienen im Schnitt 16 Prozent mehr als Bachelorabsolventen.” Koose hat für gehalt.de Bruttogesamtgehälter von knapp 22.000 Vollzeitbeschäftigten verglichen. Neben dem jährlichen Grundgehalt sind dabei auch Boni und Prämien eingerechnet. Spätestens ab dem sechsten Berufsjahr verdienen demnach Masterabsolventen deutlich mehr als Kollegen mit Bachelor, denn zu diesem Zeitpunkt erreichen viele von ihnen eine besser bezahlte Führungsposition.

「大学院過程を修了した者は、平均して学部卒業生よりも平均して16パーセント多く給料を稼いでいる、と22000人近い税込み給料を比較した結果明らかとなった。これには、基本給だけでなくボーナスも加味されている。平均すると、卒業後6年後くらいで大学院卒業生は学部卒業生の給与を追い越し、良いポジションにつくことができる。」

また、以下の表は日本とアメリカの比較ですが、アメリカでは部長と呼ばれる人々の約半数が大学院過程を終了しています。4年制大学以下の学歴で部長職に就いている人は、営業職で10%以下、と、日本よりもとりわけ学歴が重要視されていることが理解できます。

日米比較

(出典:経済産業省「我が国の大学・大学院の現状」)

かたや、bachelorで学業を終えるメリットもあります。まず、マスターを卒業するにはbachelorプラスさらに4セメスター必要ですし、bachelor時代よりも過酷な試験戦争に耐え抜かなくてはいけないので、さっさと勉強畑から足を洗って働きたい人々は進学しない道を選びます。

というわけで、bachelor、master、ともにメリット・デメリットあるわけですが、ドイツではmasterを取得するほうが一般的だ、ということを覚えておきましょう。

日本人がドイツでマスターを取得するメリット

さて、上述の内容はあくまで「ドイツ人」のマスター取得におけるメリットです。ここで、日本人がドイツでマスターを取得する意味について見ていきましょう。

1.ドイツでの就職の道が開ける

まず、もっとも大きなメリットは「ドイツでの就職の道」が開けるというところです。道が開ける、というだけで、保証されるわけではありませんが、少なくとも確率的に高まります。

ドイツの大学院を卒業しなくてもドイツで就職する道はもちろんありますが、それにあたっては例えば「手に職」が必要になってきます。つまり、医学、看護、芸術、建築、デジタル知識、などです。それらが無い場合、企業サイドは総じてドイツでの学位取得者を好みます。

なぜか。まず、ドイツで大学・大学院過程を終了した場合、少なくともドイツに順応できる能力がある、とみなされます。つまり、日本人は、あまり海外に順応できる民族とみなされていないので、これは就職戦線で不利に働きます。それのステレオタイプを払しょくするのに「ドイツの大学・大学院を卒業しました」という肩書は一役買うわけです。

2.語学が磨かれる(ドイツ語、英語)

これは1の「ドイツでの就職」に少なからず関わってきますが、大学で2年も3年も生活して単位も取得すれば、当然ドイツ語・英語のスキルが磨かれます。逆に言えば、語学学校で1年留学したくらいでは、ビジネスドイツ語には十分とは言えません。

ただし、ここで注意しなくてはいけないのが、語学力はドイツで就職するうえでの「十分条件」でこそあれ、「必要条件」ではない、ということです。語学が堪能でなくては就職できませんが、堪能だからといって雇ってもらえるとは言えないのです。

3.ヨーロッパでの人脈が広がる

ヨーロッパの就活戦線を見ると、3割が「知人から紹介」によって職を得ている、という統計データが存在します。こうした人とのつながりはジョークの意味合いも込めて「vitamin B」と、ドイツでは呼ばれています(Bは「Beziehung(関係)」のB)。

就活のみならず、現地の学生とのコネクションは将来文系でのキャリアアップを考えるにあたって、大きな糧になってきます。利害関係なしで人脈を作り上げるには、やはり大学・大学院生活が理想的、というわけです。

まとめ:日本人はドイツに留学すべきか?

さて、最後にここまでの考察、データをまとめておきましょう。

「専門性」に加え、上述の「ドイツでの学歴」「語学力」「人脈」が、「ドイツでの大学院に留学する」におけるメリットだと私は思います。専門性を身に着けたければ日本でもできますが、現地の人脈や現地の大学を得たという肩書は、現地に行かないと得られません。

上述の通り、「ドイツへの留学」は、特に大学院進学の場合、「スペシャリストの育成」が目的となります。そのため、ドイツで将来的に「スペシャリストとして働きたい」人や「ドイツで得た技術やスキル、人脈を日本で活かす」なども目的がある場合、ドイツへの留学は非常にお勧めです。

かたや、こうした明確な目的がなく、ただ漠然と「ドイツに留学したい」という目的でドイツにくることはお勧めできません。もちろん、得られるものも多いですが、おそらくペイしないと思います。

「ドイツへの留学」は、すべての人の人生を魔法のように変えてしまうようなものでは決してなく、それを活かせる条件、目的を満たして初めて効果を発する種類のもの、だということを覚えておきましょう。

そうすると、語学学校などを選ぶ際も、単に語学を学ぶだけでなく、以下のように、その先のキャリア、大学進学などをセットで相談できるようなところのほうがお勧めできます(ただし高額)。