ドイツの文学を読んでドイツ語の勉強を|知っているとCool!

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ドイツは様々な文学者を輩出した国でもあります。前回図書館についてのまとめをしましたが、ドイツ語の勉強もB2~C1あたりになってくるとドイツ語の本が読めるようになります。

国の施策ということもありますが、ドイツ人(特に女性)はとにかく本を読むのが大好きです。ドイツの有名な作家といえばゲーテ、シラー、ハイネ、ヘッセ、カフカなどですが、そうした有名どころは彼らは一通り読んでいますし、日本の村上春樹などもファンは多いです。

ドイツ文学というと難解そうな響きがありますが、実際はメルヘンから哲学的なものまでいろいろなジャンルがあります。

今回は、ドイツ滞在中にドイツ文学に携わろうという方のために、ドイツの図書館で読むことのできる、ドイツ文学の中でお薦めだと思われる7人の作家について紹介していこうと思います(7に特別意味はありませんが)。

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ドイツ文学のお薦め7人の作家

ドイツ文学とは、という話は省略します。今回は単純に、ドイツの作家ということで、ドイツ語圏の作家を紹介していきます(そのため、オーストリアなども含まれます)。

ちなみに、ドイツの本屋や図書館では、日本の岩波文庫のように文学作品が文庫になっています。これらはハードカバーと違って安く買うことができますので、ドイツ語の勉強にもちょうどよいでしょう。

ドイツの黄色い文庫本

ドイツの黄色い文庫本

1.Johann Wolfgang von Goethe(ゲーテ) 1749~1832

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言わずと知れたドイツの大文豪です。小説というだけでなく、自然科学、戯曲、詩作、絵画などあらゆる方面で多才な才能を発揮しました。

ゲーテが偉大すぎたために、その後のドイツの文学は100年遅れたとも言われています。トーマス・マンもゲーテを評して『ドイツの代表的詩人』と言っていることから、彼の作品がドイツ国民に愛されていることが分かります。

自身の失恋を描いた『Die Leiden des jungen Werthers(若きウェルテルの悩み)』は、それに共感した多くの自殺者をだすなど、当時社会現象にもなったほどです。これによって『ウェルテル効果』という言葉がつくられました。

おすすめ作品

2.Franz Kafka(フランツ・カフカ) 1883~1924


カフカの作品は難解だと言われています。それはカフカの文体が、3つの民族性をそなえているということもあり、常に浮ついたものであったため、捕えがたい印象を抱かせるからだと私は思います。

ドフトエフスキーと同じく、実存主義の作家として知られており、カフカは作品の中で自己の外界からの疎外を謳っていると言われています。

例えばその長編小説の『Das Schloss(城)』の中で、主人公はKという名前で表され、理不尽な世界の歯車に巻き込まれていきますが、果たしてこのKの辿った運命は、小説の中の出来事なのか、それとも我々の実在世界を描いたものなのか、といった形です。

おすすめ作品

3.Novalis(ノヴァーリス) 1772~1801

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ロマン主義詩人として知られるノヴァーリスです。ゲーテと方向性は異なりますが、彼もまた、悲恋を題材にした代表作を描いています。

大学生時代、彼はわずか12歳の娘ゾフィーと婚約を結びますが、その婚約者が病に倒れ、帰らぬ人となりました。その悲恋を題材に彼は『Heinrich von Ofterdingen(青い花)』という代表的なロマン文学を書き上げます。

彼の代表的な長編はこの一作しかありませんが、この夭折の詩人は日本でも多くの文学者を魅了しました。永井荷風を魅了し、ベンヤミンをして「ロマン派の天才」と言わしめたノヴァーリスは、わずか28歳で亡くなっています。

おすすめ作品

4.Paul Thomas Mann(トーマス・マン) 1875~1955

トーマス・マンはドイツのノーベル賞作家です。ナチスと敵対したことから、のちにアメリカに居を移してそこで文学をつづけました。

教養文学から芸術至上主義的な文学まで音域広く精力的に書き続け、代表作としては長編の『Der Zauberberg(魔の山)』があげられます。

『Der Zauberberg(魔の山)』は彼の妻のサナトリウム養生生活を題材にしたもので、もっとも小説内で主人公は多感な青年になっていますが、そこで様々な国籍の人々や、四季を通じて成長していく物語です。

日本でサナトリウム文学といえば堀辰雄の風立ちぬなどが思い浮かびますが、そういった静謐に死を待つ印象というよりも、むしろ死に立ち向かう自我といった形で書かれています。

おすすめ作品

5.Rainer Maria Rilke(ライナー・マリア・リルケ) 1875~1926

Rainer Maria Rilke

リルケはドイツというよりオーストリアの詩人ですが、ドイツ語で書いていますのでドイツの作家としてカウントします。リルケもまた、難解と言われる作家の一人です。

彼の生きた時代、オーストリアはまさにクリムトを代表するウィーン分離派芸術の時代です。世紀末のデカダン的な芸術がもてはやされる最中にあって、彼は自身の詩人としての才能を開花させます。

その当時のほかの作家(ホフマンスタール、ゲオルゲなど)と同様言語への可能性を模索したリルケは、パリ滞在を題材に『Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge(マルテの手記)』という長編文学をしたためます。

近代作家の難しいところなのですが、内容というよりも詩的な外観が重視されるため、近代作家に関しては原文で読むのが望ましいと私は思います(特に詩作品など)。

おすすめ作品

6.Ingeborg Bachmann(インゲボルグ・バッハマン) 1926~1973

オーストリアの女流作家です。戦後、多くの作家が戦争を題材とした文学を書きましたが、彼女は坦々と独自のスタイルを貫きました。

彼女のもっとも代表的な作品が『Das dreißigste Jahr(三十歳)』です。邦訳もされていると思いますが、もしかしたら絶版になっているかもしれません。

なんのドラマ性もない、30歳になろうという男の姿を描いただけの作品ですが、様々な情景描写の中に、実存が溶け込むような印象です。

リルケ同様、彼女もまた近代作家らしく詩的言語と実存の追求という、ドイツの哲学者ハイデッガーに影響をうけた難解な題材を用いているため、初見では微妙に難しい内容になっています。

おすすめ作品

7.Nelly Sachs(ネリーザックス)1891~1970


最後はドイツのノーベル文学賞受賞者、女流作家のネリーザックスです。上述のバッハマンとは反対に、彼女は戦争、というより迫害をテーマにした詩作をおこないます。

彼女の家はユダヤ人の家系であり、戦前~戦時中とナチスの迫害を受けています。彼女自身は助かっていますが、彼女の許嫁が亡くなっています。

同じくユダヤ人の詩人であるパウル・ツェランの盟友としても知られており、多くの近代作家同様、言語の追及をおこなった詩作が目立ちます。

特に『Die Leiden Israels(イスラエルの受難)』という戯曲形式の詩は、日本語で読んでも分からないものの代名詞だと思いますので、是非原文で読むことをお勧めします。

おすすめ作品

以上で作家の紹介は終わります。ここに紹介した7人の作家たちはドイツでは有名なものばかりですので、あとは自分の好みに合った作家を探すことをお勧めします。

ちなみに、ここに紹介した大抵の本は日本の書店でも購入できますし、原文であればAmazonで取り寄せることが可能です。私も日本にいるときに購入しましたが、送料込みで1000円くらいだったと思います。