海外旅行保険の基礎知識その3:携行品損害保険

海外旅行での保険を考える際に、優先順位が高いのは医療・傷害保険と損害賠償責任保険です。これらは、万が一の際に身の破滅に繋がる恐れがあるからです。一方、そのほかの保険特約を見てみると、重要ではあれど、必ずしも付帯べきとはいえないもので、付帯するかどうかはその人の状況や予算にあわせて鑑みる必要があります。

(なお、この記事では主にAIU保険の約款の解釈を参考にしますが、定義や規定は各保険会社によって異なり、あくまで一般論として理解してください)

その他の海外旅行保険、海外旅行保険に関する基礎知識に関しては以下のまとめ記事をご覧ください。

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携行品損害保険

損害保険の保険料は、保険会社が民間企業である以上、保険会社に利益の出るような形で計算されていますので、例えば、発生確率の大きいような事故に備える保険の保険料は高額です。例えば、次に紹介する「携行品損害保険」もそうした保険の一つと言えます。

携行品損害保険の保険が下りないケース

法律と保険の約款の解釈は似ており、どの程度まで厳密に語句を理解するかによって、一文一文の持つ意味が根本的に異なってきます。まず、携行品損害保険をかけているにも関わらず、保険金がおりないような条件とはどのようなときでしょうか?

AIU海外旅行保険によると、まず「保険契約者または被保険者の故意または重大な過失」の場合保険金は支払われません。つまり、古くなっていらなくなったカメラを故意に壊しても、保険金はおりない、というわけです(以下、保険金の払われない場合に関して、AIUの約款を参照しますが、おおよそどこの保険会社でも、この考え方は似ています)。

「保険の対象の自然の消耗または性質によるさび、かび、変色その他類似の事由またはねずみ食い、虫食い等」の場合も保険金は支払われません。保険の解釈上、事故とは「突発的」な意味合いを持つもので、徐々に変色した場合、さび付いた場合などはそもそも事故とは見なしてもらえないわけです。

さらに重要なところでは「保険の対象の置き忘れまたは紛失」の場合も保険金がおりないとされています。つまり、レストランなどに鞄を置き忘れて、帰ってきたころになくなっているような、置き引きのケースは、保険金が下りないというわけです。

携行品損害保険のモノの対象

同じくAIU保険の約款に沿って解釈していきましょう。

「被保険者が所有する物」、および「旅行行程開始前に被保険者が当該旅行のために他人から無償で借りた物」が携行品の範囲に含まれると書かれています。特徴的なのは、無償で借りる、という文言で、有償のレンタル(空港などで借りるWi-Fiレンタル)などはこの保険の対象ではなく、損害賠償責任保険の対象になる、ということです。

そして、この「所有するもの」でありながら、保険金の対象にならないものが存在します。代表的なところでは、有価証券、現金、切手などで、要するに、財布を盗まれて、その中に10万円入れていたとしても、返ってくるのは財布の分の損害だけで、中身の現金などは対象外、ということです。

同じく、免許証、クレジットカードなども対象外なのですが、パスポートは保険の対象になるケースが多く、パスポートを紛失しても、再発行のための費用は負担されることが多いです。

その他、「自動車、原動機付自転車およびこれらの付属品」や「ソフトウェア」なども対象外で、実際に海外でどうしても壊れて困るようなものがあれば、渡航前に保険会社に確認してください。

保険料・保険金の算定

まず、携行品損害保険は保険料の高い保険商品です。その保険料を安くするため「免責金」というものが使われることがあります。どういうことかというと、例えば「免責金3000円」で考えてみましょう。これは、10万円のカメラを壊してしまい、6万円の修理費がかかった場合、6万円のうちの3000円は自分で負担して、残りの57,000円は保険会社が支払います、というものです。

なぜこんな面倒な措置が取られているかというと、携行品損害の請求は、高額なものではなく、少額のもの(3000円以下のモノ)の請求が多く、それらを全部受け付けていると保険会社が大赤字になってしまうからで、逆に保険料を安くするためにも、このような措置が取られている、というわけです。

そして、保険金の請求に当たって、注意する点があります。保険会社から支払われる保険金の算定は、買った時の値段ではなく、時価で計算される、ということです。どういうことかというと、10年前に50万円で買ったカメラを今回の海外旅行で盗まれたとして、50万円まるまる返ってくるとは限らない、ということです。

これは「減価償却」の考えが適用されているわけで、モノの価値は年とともに下がっていき、必ずしも買った時の値段ではない、というわけです。保険の考えは「新品を買えるだけのお金をてん補する」ではなく「その事故にあった瞬間の価値をてん補する」ですので、新品分のお金を貰えなかったからといって、保険会社が意地悪なのではありません。

ただし、裏技として(違法ではない)、時価が減価償却の考えに基づかないことを自ら立証できれば、その分の市場価値でもって損害がてん補されることもあります。例えば、ヤフオクなどで直近10回分の落札価格の平均値、などをもって、その価格があまりに減価償却によって換算された価格とかい離している場合、考慮されるケースもなくはない、ということです(もちろん、必ずしもとは言えませんが、やる価値はあります)。