インフォーマルとフォーマル、分かりにくい2つのドイツ語の形式!

hands-1010220_1920

ドイツ語の試験をパスし、ドイツの大学や大学院に合格する人は、基本的にはドイツ語の学力がB2~C1程度あると思います。これは、大学の授業にも十分ついていける、という指標です。

ただし、あくまで『一般的な』ドイツ語ですので、当然、イレギュラーなケースには必ずしも対応できるとは限りません。今回はそう言った、イレギュラーなドイツ語たちを見ていきましょう。

スポンサーリンク

難しいドイツ語(フォーマルとインフォーマル)

私はTestDafでC1を運よくパスしましたが、それでも当初、戸惑うような場面がいくつもありました。講義のドイツ語やラジオ番組のオーソドックスなドイツ語は分かるのですが、極端にフォーマルすぎたり、極端にインフォーマル過ぎると、解釈が難しいことがあります。

1.極端にフォーマルな(あるいはアカデミックな)ドイツ語

日本語でもそうですが、例えば以下の例を見てみましょう。

 統合失調症を発症し医師の診療を必要とする状態に至った時点において20歳未満であったことが,20歳に達した後の医師の事後的診断等により医学的に確認できた者であるからといって,その者が国民年金法30条の4にいう「その初診日において20歳未満であった者」との要件を満たすものと解することはできない。

一文が長く、途中で『からといって』で前提条件が覆されているので、一文の要旨を理解するのに一瞬悩むのではないでしょうか。

ドイツの文章でフォーマルなものといえば、例えば役所からの手紙や、ビザの申請用紙などで、えらく回りくどく書かれており、いつまでたっても本題に入らないので『で、結局何が言いたいの!?』となります。

ドイツのオフィシャルな手紙

ドイツのオフィシャルな手紙

例えば、これは誰にでも届く日本でいう『NHK料金を払ってね』的な手紙で、一所帯につき一回分、ラジオ料金を払ってね、という手紙なのですが、最初の一段落が本題ではなく、2段落目にならないと肝心かなめの要旨に達しないので、初見ではわかりづらいです。

途中で『Das heißt(つまり)』というイディオムが出て来るので、ここからが重要だと分かります。また、手紙の途中で『Wir bitten Sie, zu prüfen:』と太字になっており『:以下を確認せよ』という意味ですので、ここも重要だと分かります。

他にも、お役所の書類関係や、大学の応募案内など、フォーマルなスタイルのものは分かりづらく、一瞬なにかと思います。

2.極端にインフォーマルなドイツ語

今度は逆に、極端にインフォーマルなドイツ語についてみていきましょう。日本語でいう『話し言葉』というやつで、我々が友人同士などで話すときのニュアンスです。

Hat jemand Lust gegen 13:45 zu mensen?

『13:45くらいに誰か学食行かない?』

War schon um 11:30.

『11:30に行っちゃったわ』

これは、私が所属しているWhat’s upという、日本でいうLINEのようなアプリのグループのやり取りです。ここでは、スラングが登場したり、ドイツ語の基礎文法が無視されたりしています。

最初の文章で登場する「mensen」とはなんでしょう?恐らく、お手持ちの辞書には載っていないと思います。ヒントを出すと、ドイツ人はよく、名詞を動詞化する傾向にあります。

例えば、skypeすることをskypenと言うような感じです。この場合、Mensa(学食)に行くことを『mensen』という動詞化させたものを使っており、誰かの造語(もしくは新しい言葉)ですので辞書には載っていないのです。

続いて、2つめのメッセージを見てみましょう。ドイツ語には主語が必須で、かつ動詞が2番目に来る、という原則が丸無視されています。ちなみに、これを直訳すると『は、もう、11:30』となり、支離滅裂です。

ここでは、主語のIchが自明ですので省略されて、いきなり本来2番目に来るはずのwarが文の最初に来ています。ついでに、恐らく『そこへ(dorthin)』という場所を表す語句もここでは省略されていると思いますので、それらを補てんして、訳すと『(私)は、もう、(そこへ)、11:30に、行っちゃた』→『11:30に行っちゃったわ』となるわけです。

もう一つ、長い文章の例を見てみましょう。

Hey Leute!Mal eine Frage. Wer von euch macht zufällig auch den wissenschaftlichen Artikel in International Strategy. Stehen da mit unserer Gruppe gerad bisschen auf dem Schlauch.

『おいみんな!ちょっと質問。誰かこの中でInternational Strategy論の学術記事やってるやついない?俺らのグループ途方に暮れてるんだけど・・』

これもWhat’s upのグループできた文章です。『Mal eine Frage(ちょっと質問)』では動詞が省略されています。次に続く長い文章では、疑問文にもかかわらず『?』が省略されており、細かいニュアンスを表す『zufällig』=ひょっとして、が使われています。

最後の文章では、再び主語が省略され、さらにイディオム表現である『stehen..auf dem Schlauch』=途方に暮れる、が使われており、まさに、インフォーマル文章の典型とも言えます。

こういった文章を、文章として見るのならまだ救いがあるのですが、居酒屋などで早口で話されると訳が分からなくなります。

ちなみに、こういった変な文章は100%、TestDaFやDSHのような公式の試験では出題されませんので、安心しましょう。あとは、ドイツ人と日常的にやり取りをしていけば、こうしたインフォーマルなやり取りにも次第に慣れていきます。