エボラ出血熱とヨーロッパ上陸の恐怖:ドイツ報道にみるエボラパニック


日本では、現在デング熱がブームになっていてひと騒ぎで、夏ごろのエボラの報道熱はやんだようですね(どこかの製薬会社がワクチンの開発に成功したという記事を読みましたが)。

それでも、依然としてギニア・リベリア・ナイジェリアなど西アフリカ諸国ではエボラ出血熱の脅威が衰えず、9月14日現在の報道によると5000人近い患者が感染し、そのうち2500人近くの死者が出ています。

致死率50~90%を誇り、感染から2週間そこいらでAIDSがなす症状の30年分を一挙に人体にもたらしめるというまさに悪魔のような病原体ですが、果たして日本よりもアフリカに近く、直行便も運航していたドイツではどのような報道がされているのでしょうか?

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エボラ出血熱とは

そもそもエボラ出血熱とは何でしょうか?今年、西アフリカ諸国での大流行をみて、日本のメディアでも取りざたされましたが、エボラ出血熱自体は昔からアフリカにある病気です。

最初にエボラの症状が報告されたのは1976年のことでした。スーダンのヌダラという町で、倉庫番をしていた男性が高熱や出血症状を訴え、その後まもなくして亡くなっています(一説によると、コウモリを食べたことが原因で感染したとされています)。

結局この年は、200人近くの犠牲者を出してエボラ流行は終息しますが、その後もアフリカ大陸では1995年の流行などを経験します。それでもそもそものエボラ熱における致死率が高く、他の宿主に感染する前に宿主が死んでしまうので、1000人を超えるような大流行にはなりませんでした。

それが今回、何か突然変異でもしたかのような爆発的な流行をみせ、アメリカ・西欧諸国やアジア諸国にも不安を抱かせています。

各国政府がこれに対し様々な対応を行い、国境なき医師団やWHOももろ手を挙げてその感染拡大に尽力していますが、西アフリカ諸国のエボラ禍はいまだにとどまるところを知りません。

ドイツにおけるエボラ熱の報道

1か月ほど前、Web新聞のZeit Onlineがまとめたところによると、『ドイツにおけるエボラの流行リスクは極めて少ない』ということでした。

Die Ebola-Seuche wird nicht in Europa ausbrechen

『エボラウイルスはヨーロッパでは拡大しないだろう』

上記サイトによると、ヨーロッパではまずエボラ禍の拡大は起こりえないだろうと伝えてられています。

ドイツの検疫システムでは、渡航歴から即座に患者を隔離することは可能であり、そもそもエボラが、体液(血液、精液、汗)などを通じて感染するものなので、それらに触れるようにさえしなければ問題ないようです。

また、患者の体液を通じての感染は、『症状が発生している状況』でのみ発生すると伝えられており、発症前の患者と同じ飛行機に乗り合わせたとしても、感染の可能性は極めて低いそうです(あくまで今のところの研究では、ですが)。

では、なぜこうした防疫体制によって西アフリカの感染拡大にストップがかけられないのかというと、西アフリカ諸国は度重なる内戦で疲弊し組織的な医療体制が整えられない上に、また長年の白人支配によって白人の言うことを信じない節もあるということもあり、最低限の防疫体制さえままならないことが原因です。

それどころか、逆に医療キャンプから家族がエボラ患者を奪還する・医療従事者を襲撃するという不可解な事件もおきています。

死者を悼むためにエボラで病死したものの肌に直に触れ、病院すらないので家族が世話をし、道端にはエボラの病死者の遺体が横たわっている、こうした状況では感染拡大もいたしかたない、というのがドイツ紙の見方です。

同紙は、最後はこのような文言で締めくくっています。

Aufklärung ist das Einzige, was helfen kann. Doch momentan scheinen sich die Menschen schneller zu infizieren als es gelingt, sie zu warnen.

啓蒙こそが、彼らを救う唯一の手立てであるにもかかわらず、現状を鑑みるに、彼らはまるで感染拡大を助長しているようにすら思える

エボラの今後

7~8月ごろにドイツのラジオ・テレビ番組、新聞などで相次いで取りざたされていたエボラ熱の報道ですが、最近のところスコットランドの独立や、ウクライナ・ロシア問題の影にかくれて下火にはなりました。

8月ごろにベルリンのハローワークでエボラと疑わしき女性が見つかりましたが、彼女も結局のところ重度の胃腸カタルであったことが判明し、ドイツにおける報道熱は一通り醒め終えたようです。

ただ、エボラ出血熱に限らず、東ヨーロッパでは未だにAIDSは拡大の一途を辿っているなど、報道に隠れて災禍はいたるところに潜んでいます。

念のため、エボラ熱感染を防ぐ原始的ですが有効な手立てとして、海外旅行をされ、外出された場合にはうがい・手洗いを推奨します。